16
それから二人は仕事部屋に戻りエリオットは手に持った書類をデスク置き、ブラッドはおもむろに椅子に腰かけ、思案気にエリオットに振り返った。
「エリオット、お前、あの女をどう思う?」
「あれは確実に男を知らねぇな。―――え?違うのか?」
エリオットは顎を撫でながらニヤニヤしながら答えたが、無表情のブラッドと眼があって、慌てて付け足した。
「あの女が、白なのか黒なのかという話だ。」
ブラッドはため息をつきつつ手元の書類に目を通す。それはパロマに密かに付けている部下からの業況報告書だった。
「そうだな・・・。武器庫や宝物庫に盗みに入った形跡はねぇし、いつでも屋敷から出られる場所に配置しても、逃げる素振りもねぇ。至って真面目に働いているぜ。鈍くせぇから雑用さえも満足にこなせてねぇけどな。」
さらに言うなら、背中に隙を見せても攻撃をしかける事さえしない。茶会に従事させても、毒を盛ったりもしてこない。風呂場の一件からも、女を武器に仕掛ける事も出来なそうだ。
「―――こっちが仕掛ける罠に何一つ引っ掛からない。相当の策士なのか、それとも天然のアホなのか・・・。」
ブラッドはこの前あった出来事を反芻する。それはこの部屋を掃除しにきたパロマが、珍しくオドオドとしていた時の事だ。ブラッドに目を合わせず無言でひたすら床を掃いていたので、やっと正体を現したと察し、優しく問いかけた。
「どこか感じがおかしいが、何か隠し事があるのではないか?」
あからさまにビクっとして挙動不審になる。地は嘘の付けない性格なのだろう。
「正直に話せ。そうすれば許してやらない事もない。」
ブラッドはもちろん許す気なんて更々無かったが、そんな事はおくびにも出さずにサラッと言いのける。
振り返ったパロマは、目を潤ませながらポケットをさぐりブラッドの前に差し出した。
「ボ、ボス・・・ごめんなさい。ワザとではないんです!!」
手にしているのは―――彫刻の一部だった。良く見ると鼻の形をしている。
彼女の半泣きの告白では、いつもの如く双子にちょっかいをかけられて箒をブンブン振って追いかけていたら、近くにあった石像の顔に直撃させてしまったとか・・・。
「は、鼻が、と、取れてしまって・・・どうやってもくっ付かなかったんです。見るとすごくすごく高価そうな美術品で・・・本当にすみませんでした!どうかこれ以上借金を増やすのだけは勘弁して下さい!」お願いします、とパロマは土下座をする勢いだ。


prev next

38(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -