15
「いやああああ――!二人とも脱がないでっ!落ち着いて!ドア閉めないで!ズボンに手を掛けないで―――!!」
「落ち着くのはパロマでしょ?ここは声響くんだからうるさいよ。」
「パロマも一緒に入るんだから早く脱いじゃえば?」
パロマは顔面蒼白で呼吸困難になり、口をパクパク動かした。完全にパニックだ。
さっきトラブルを回避したばかりなのに、全く同じシチュエーションに陥っているのはどういう展開だ。人生で初めて男性の体を見てしまった日に、また別の異性の体まで見る羽目になるとは。パロマはぎゅっと目をつぶり、こっちは子供、子供の男の子、と頭の中で呪文のように繰り返した。そうこうしている内に二人は走って浴槽にダイブしていた。派手に水しぶきが上がる。
「なんだよっ。ボス達の後だからお湯がぬるい。パロマーお湯足して〜!」
「兄弟!僕の最新武器をお見舞いしてやる!サメサメソーシャーク君だぁ!!」
ディーとダムはバシャバシャとはしゃぎまくっている。その姿を遠目で見ていたパロマは、胸の鼓動がさっき程ひどくないのが分かってホッとした。浴場にも簡単に一歩を踏み出せる。
「ほらっ二人とも、ちゃんと身体を洗ってから湯船に浸からないとダメですよ?」
スカートを片手で軽く持ち上げながら浴槽の先まで行き、お湯が出る蛇口を捻った。お湯に手を浸して温度を確認していると、浴槽の淵に二人が近付いてきた。
「なに?まだ脱いでなかったの?パロマ。」
「もしかして、僕達に脱がして欲しい―――とか?」
ディーが子供とは思えない妖艶な笑みを浮かべて、パロマの腕を掴む。パロマはビクリと身体を強張らせるが、掴まれた腕はびくともしない。クスクス笑いながらダムがゆっくりと両腕をパロマの首筋から背中にまわし、仕事着のホックに指を掛けた。
「ちょっちょっと離して!・・・あっ!」
二人の豹変っぷりに胸が激しく鳴り出す。もう子供だなんて誤魔化していられなくなったパロマは、真っ赤になりながら必死に抵抗した。ダムに頭突きをしようとして軽くかわされ、ダムが離れたのは良いが、またもやツルッと足を滑らせた。ディーがまだ腕を掴んでいたので、引っ張られる様に浴槽の中に服を着たまま浸かってしまった。パロマのスカートが水分をはじき、お湯に沈まず空気を含んで大きく膨らむ、それはまるで―――
「ぅわはははっ!パロマがクラゲになった―――!」
「フワフワ浮いてるよ!おっもしろ〜い!!」
二人は溺れそうな位ひっくり返って笑い転げた。ふるふると震えながらパロマは立ち上がると水分を含んで重くなった服を物ともせず、バシャバシャと歩き浴槽から這い上がると、たらいを無造作に二つ掴み出口のドアまで走り抜けた。


・・・そんな大騒動の浴場が面している廊下に、仕事の話をしながらブラッドとエリオットがたまたま通りかかった。突然大きな音がして少し先にある真っ白なドアが勢いよく開いた。
突然の出来事に目を点にしている二人の先に、全身ずぶ濡れのパロマが息をきらしてそこから転がるように飛び出してきた。パロマは体制を立て直し、振り返って出てきた部屋に向かって何か罵倒を浴びせている。そして手に持った二つの物体を振りかぶって、部屋の中へ投げた。中からカコーンカコーンと軽快な音が聞こえて、双子の大爆笑が木霊した。
彼女はそれから水滴をボタボタと垂らしながら猛然と廊下を走り、姿が見えなくなった。


「・・・何なんだ、あいつは。」
「・・・また双子に苛められてんじゃね?」


二人はしばし立ち止まって、彼女の消えっていった先を呆然と眺めた。


prev next

37(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -