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「こんな物、ずっと持っているから直らないんだ。」
呆れた顔で、ブラッドはパロマの手から彫刻の一部を受け取った。デスクの上にそれを置くと、すぐさま溶ける様に消えてなくなった。
「えぇ?!」
パロマはビックリしてデスクの周りを探し回る。
「この世界は時間が経てば、ある程度の物は元に戻るように出来ている。後生大事に持っていては、戻る物も戻れなかった事だろう。」
「あっ―――そう言えば、以前エリオットさんが発砲して壊れちゃった筈のテーブルが、無傷で同じところにあったのって、それも元に戻ったという事ですか?」
「そう言う事だ。彫刻も戻っているだろうから後で見に行くと良い。ついでにこの机でも試しておくか?」
そう言って、常に携帯している短剣で机に小さな傷をつけた。
それからと言うもの、掃除や書類を届けにくる度に、パロマは机の傷を確認していった。何時間帯か経過して傷がなくなると、目を輝かせて驚いていた。
あまりに純粋に驚いているので、実は嘘で本当は全く同し型のデスクと取り替えせたと教えたらさらに驚嘆し、そうだったんですねぇっと疑う素振りも見せなかった。


―――明らかにバカだ。単純すぎてこっちが拍子抜けする


「会合の時間帯を知っていたのが消せない証拠だな。まだジャック・クロフォードの手先という線が消えた訳ではない。しかし、外部とコンタクトを取っている痕跡もなしか。」
「どっちにしろ二者択一、だな。眩しい位真っ白か、えげつない程真っ黒か・・・だろ?」
ブラッドは立ち上がり、窓から庭を覗く。二階にある部屋からは中庭が一望できた。遠くで仕事に励むパロマがすぐに見つかる。
ブラッドはその光景を冷ややかに目視した。


「―――くしゅんっ・・・風邪引いちゃったかな?」
パロマは自分に酷い容疑がかけられているだなんて露知らず、濡れた自分の仕事着をせっせと干す。
「何でいきなり二着も濡れるのよ・・・。それにしても〜、あの悪ガキども!いつか二倍にして返してやるぅ!二人いるから四倍か・・・。」
突然強い風が吹いて、ひと括りにしたブルネットの長い髪が木の葉と共に風に舞う。
ふと視線を感じて屋敷を振り返ると、無数にある窓の一角にブラッドの姿が見えたような気がした・・・。


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bkm


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