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「誰だって好き嫌いはあります。すべての人を好きだなんて、神様や偽善者位なものです。だから、貴方に苦手な相手がいたって、当然です。それが当り前なんです。でも、それは私にだって当てはまるんですよ?貴方の物差しで、他の人まで測ってはいけません。」
パロマの顔が何かを耐える様に歪んでいた。本当は恩人でもあるエリオットにこんな生意気は言いたくは無かった。しかし、この開いてしまった距離を縮める為には自分からまずは心を曝け出さないと、それがパロマの考えに考えた末の行き着いた結果だった。
そして誰もが驚くべき事に、避け続けていたパロマにここまで良い様に言われ続けたエリオットが猛反撃に出る事もなく、ただ茫然と座っているだけなのだ。
まるで初めて聞いた話に興味が出たかの如く、黙ってパロマの好きにさせている。
そして、気分が高揚しているパロマの必死の説得も止まりそうになかった。
「貴方が嫌いでも私は好き、でも逆に言うと私の好きな人を貴方が嫌っていても、別に咎めたりしません!人の価値観はいろいろなんですから、嫌いなら嫌いで良いじゃありませんか!!かく言う私にも大っっっ嫌いな男性がいます。貴方と同じ耳を持った方ですが、本当に嫌いです。もし彼にばったり会ってしまったら、後ろからこっそり近づいて、落とし穴に落っことして、上から砂を掛けて埋めてしまいたい程嫌いです。思い出しただけでも、全身が鳥肌に」
憎々しく恋敵の姿を思い描いていると、頭の上にフワッと手が乗った。話を止めて何事かと顔を上げると、
いつの間に立っていたのか、苦笑いを浮かべたエリオットが自分の頭をゆっくりと撫でていた。
「もう、いいよ。―――分かったから。」
その優しい声色が、この場に居合わせていた全員に稲妻に打たれたかの様な衝撃を与えた。まさか、
まさか、あのエリオットが、
ユリウスのユの字を聞いただけで不機嫌全開モードに切り替え、弁解も聞かず問答無用で自慢の銃を突き付け全員瞬殺していたあの、エリオットが・・・


―――時計屋に係る話題を笑顔で許す時が来ようとは―――



しかし今現実に、完全無視を貫いていたパロマに向かって会話をしているエリオットがいる。
「ハハッ、お前の言う通りなのかもな。」
エリオットの話しかける口調でさえすっかり元通りで、加えて溜飲が下がったみたく晴れやかな表情をしているのが、さらに信じられない。
「てめぇは宰相野郎がマジで嫌いなんだな。・・・それにしたってなぁ〜、仕留めるにしても仕掛けが幼稚過ぎるだろ?」


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bkm


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