35
「え?そうですか?それなら、ディーとダムに教えてもらって、これでもかって程懲らしめても良いんです。私からアリスを奪ったんですから、その位したって罰は当たりません。」
嫌いな人物にどう嫌がらせをするかで盛り上がった二人の間には、以前あった険悪なムードがさっぱりと聞け失せていた。普通の態度に戻ったエリオットと真逆に、テーブルの端には一気にテンションが急降下した二人が、憎々しげにその様子を眺めていた。
「「気に食わない。」」
言わずと知れた、ハイパー不機嫌に急変身したディーとダムだった。
「何で元に戻っちゃう訳?あのままずぅ〜っと仲違いしてりゃ良いじゃん。」
「ホントはあいつの方が仲直りする機会を伺っていたんだぜ。絶対だよ、絶対。あ〜ぁ、あんなにニヤニヤしちゃって、すっっごくムカつく。」
目の前の料理を憎き兎と思ってグサグサとフォークをぶっ刺していたディーが、辛抱ならないと立ち上がった。
「もぉ耐えらんない!何だよあの二人だけ〜みたいな空気は!!おい、パロマ!!パっ・・・
はぁああ???」
遠くから声を掛けようとしたら、静まり返っていた筈の室内にまるで和解した二人を祝福するような楽曲が流れ出す。さらに我が子を見守る母のような穏やかな表情をした役無し達が場の雰囲気を盛り上げるかの如く、床の汚れを素早く回収し花等飾りだした。
「何なんだよアイツ等までぇ!!ちょっそこどけって!邪魔っ・・・何妨害してんだよー!!」
「お二人共お食事中に立ち上がってはいけません。まだ沢山残っていらっしゃるではありませんか。」
ニコリと笑った配膳の役無しがドンと二人の行く手に立ち塞がる。
常々役付きでもある上司に盾突く事等一切ない彼らだが、この場だけは違った。
何としてもこの奇跡を守り抜くという、気迫に満ち溢れている。
形勢逆転されたディーとダムはギリギリと歯ぎしりしながらも席に戻り、その悔しさを込めて肉を食いちぎった。
少々先でそんなやり取りが行われているとはつゆ知らず、パロマとエリオットの間では久々である平穏な空気に包まれていた。
「ああ、そういえば、せっかくの飯をダメにしちまったな。」
デーブルや床は甲斐甲斐しい配膳係達によって綺麗に片付けられたが、お陰でエリオットの前には広いスペースがあるだけになってしまった。
それを少し残念に思いならがテーブルに目を向けていたエリオットに、パロマがニコリとほほ笑んで手を合わせた。
「それでしたら、安心して下さい。―――こんなこともあろうかと・・・・ほらっ!」
同僚達の手を借りて、サッとまるで手品の様に先ほどのプレートを甦らせた。目を見張っているエリオットに、パロマは照れながらネタ晴らしをした。


prev next

348(348)

bkm


top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -