33
「これはやり過ぎですよ。いい加減にして下さい!!」
パロマの張り上げた声がざわついていた室内を駆け巡った。
これには食事を楽しんでいた双子の手も再度止まった。
ディーとダムの悪戯に声を荒げる事はあっても、他の者に対してこうも怒りを露わにすることが無かったパロマだ。ましてや、上司と認識しているブラッドやエリオットに対しては尚の事。それを分かっているパロマの同僚達は故に非常に驚いた顔をしていた。全員が固唾を飲んで見守る中、パロマがグイッと一歩エリオットに近づいた。足元にあった皿の破片を踏んだのか、パリンッという硬質な音が沈黙の空間に広がった。
そして何を思ったのか、両手でエリオットの頬を力いっぱい挟み彼の動きを遮って自分との距離をグイグイ狭めていった。絶対に逃さないぞとばかりに視線をしっかりかみ合わせて、






「私は貴方の事が、好きです。―――エリオットさん。」


と、突拍子も無い事を言い出した。
それを聞いていた双子があまりの衝撃に口に詰め込んだ食べ物を「ウッ!」」と、喉に詰まらせた。
近くでピッチャーからグラスに水を注いでいた支給係はグラスから水が溢れて零れだしているにもかかわらず、ピッチャーと斜めに傾けたままガチンと石化してパロマを見続けている。
周囲の異変も何処へやら、パロマは只管エリオットだけを視線に捉えて話し出した。
「好きなんです。貴方が私に冷たくても私を避けても、私の気持ちは変わりません。何も出来なかった私を辛抱強く世話をしてくれた貴方を嫌う事は出来ない。・・・でも、ユリウスさんも好きなんです。」
敵視する男の名前を口にされて、エリオットの視線が鋭くなる。が、以前の様にすべてを無視して立ち上がりはしなかった。その変化に、周りの者達もが目を見張っていた。
「エリオットさんはユリウスさんの事が好きではないのでしょう?それで良いじゃないですか。」
食器類の触れる音がいつの間にか途絶えていて、静まり返った茶会にパロマの凛とした声だけが響き渡る。


prev next

346(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -