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(後は・・・っ) 
ブラッドへの給仕が終わると、パロマはチラリと横へ視線を流した。思わず息がグッと詰まる。ドア傍で待機している1号と2号に於いては胸の時計の針が急回転し寿命を縮めそうになっているのは言うまでも無い。
ここで立ち止まっては意味がないとパロマはグッと気合を入れて、満面の笑みを作りクルリと向きを変える。
その時ばかりは、料理に夢中になっていた双子もチラリと視線を向けた。
「さ、最後はエリオットさんにです。大変お世話になっているエリオットさんには、特別に腕に縒りを掛けてご用意させて頂きました、この産地直送よりどり人参尽くし豪華盛り合わせです!」
パロマが重そうに持つそのプレートには、今まで見た事も無い程の大量の人参料理で埋め尽くされていた。
オードブルにサラダ、肉と絡めた炒め物、皮に包まれた彩り鮮やかな蒸し物、揚げ物、煮物と、生野菜の枠に拘らず味が触感に空きが来ない思考を凝らしに凝らした一皿だった。
それには双子のみならず、ブラッドでさえ目を見張った。
パロマが暗記してきた料理の説明文を、ことさら丁寧に伝え出す。
「こちらは人参を軽くソテーしたものに、赤ワインのソースがかかったものになります。パンに乗せて食べても美味しいのでおススメですよ。この赤みが強い人参は無理を言って料理長に取り寄せてもらいました。風味豊かで食感が良いので素揚げにしてあります。素の味を楽しむ為に、岩塩を少しだけ付けて食べてみて下さいね。」
まるで、パロマの方が人参の虜になってしまったかの様な知識量だ。エリオットが黙ったままなのでこれは好感触かもと、パロマはいい気になって話を続けようとしがしかし、
事はそうトントン拍子には進まないものだ。
「そして、これが最近人参料理で美味しいと定評のお店に3号さんが並んで下さって、テイクアウトを」
ガシャーーッン!!!



・・・・・




「あ・・」



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bkm


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