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「お茶会でもないのに、呼び出しって珍しいね。」
「う〜ん、何か目新しい食材が手に入ったとか?」
ディーとダムが揃ってブツブツと文句を言い合いながら廊下を歩いている。
裏庭から森へ入ろうとしていた矢先、部下達にそれを止められたのだ。
舞台会場に向かう前に、馴染みの武器屋にちょっとだけ顔を出そうと思っていたのに。
取り立てて急ぎというわけでは無かったが、決まっていた予定を第三者によって捻じ曲げられたらいい気はしない。
「あ、ボス。」
二人は丁度階段を下りてきたブラッドと鉢合わせた。
「あれ?ボスはもうてっきり現地入りしているのかと思ってたよ。まだ向かわなくて良いの?」
「いや、出しなに料理長から声を掛けられたんだ。屋敷を空ける前に新作の料理を食べてから行けと。時間が押しているから、食べたらすぐ出かけるが。」
「ふぅ〜ん、んじゃ行く所は僕達と一緒か。」
「チェッ。ボスん所には料理長が直々にお出ましだったんだ。僕達なんか下っ端の下っ端みたいのがやってきたのに。ナニこの待遇の違いっ」
「そんなの当り前だろう。」と軽く失笑したブラッドが二人よりも先に行く。
食事をする為の広間に続く扉をブラッドが開ける。すると、
「ん?ブラッドも呼び出しくらったのかよ。」
「あ、馬鹿ウサギもいる。」
「って事は、新作料理はオレンジ色だな。うぇぇっ、一気に食欲が無くなった。」
「・・・・てめぇらは初っ端からムカつく言葉しか吐けねぇのな。」
「丁度良かった。エリオット、オールドソーンズに向かう前に、お前には2、3仕事を任せたい。」
そう言い出したブラッドは既に仕事の顔になって、エリオットと立ったまま打ち合わせを始めてしまった。
双子は長テーブルに近づいて、既にセッティングが済んでいる膳を見渡した。パンにサラダに数種類のオードブル。特に目新しい品は目につかない。
メインが特別なのかと二人して小首を傾げていた所、急に楽しげな音楽が聞こえ出した。
仕事の話を止めて、ブラッドとエリオットも広間の入口に目を向ける。すると、
「さあ皆さん!お食事の時間ですよ〜!!」
音楽が一番盛り上がった所で扉が大きく開かれ、廊下から白いコックコートに黒いギャルソンエプロン、首にはえんじ色のスカーフといったシェフさながらの出で立ちをしたパロマが現れた。


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