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ダムの手が清楚なデザインの衣装の所で止まった。
オフホワイト基調としたロングトレーンのドレスはバラのコサージュや厚みのあるレースが幾重にも重なってはいるが、長い袖やハイネックが肌の露出を極端に抑えてい為、貞淑感が漂っている。また鳥のイメージに近づけるようにか、首から下広がりになっているデザインは体の凹凸には全く沿っていないので、見ようによっては堅苦しい聖歌隊の衣装にすら見える。
「おっ!これはパロマさんの衣装じゃないっすか。アヴェルラ、めっちゃ可愛いっすよね〜。これ着たパロマさんなんか想像したら、それだけでも鼻血」
「ダサッ!!」
4号の話途中にディーが大声で割り込んできた。パロマの衣装に向かって指した指が震えている。
「センスなさすぎだろ〜!!何この野暮ったい衣装?!歩くソフトクリームかよっ。こんなん着るパロマになんか全っ然興味湧かないよ!」
「うんうん。酷過ぎるよね。仮装パーティーじゃないんだから。」
双子の辛辣な批評に4号が目を見張る。そしてもう一度デザイン画を眺めたが、自分のイメージしているアヴェルラとなんら相違は無かった。
「お二人とも、これは普段着とは訳が違うんっすから。この舞台見た事ないんっすか?いろんな男に言い寄られても村の青年一人を一途に思い続けるアヴェルラつったら、どこもこんな衣装っすよ。遠くの客席からでも誰が誰を演じているのか一発で分かっるってのも大事なんっすよ」。
「へぇ〜。お前、詳しいね。」
「こう見えて俺、インテリ派なんで。」
「さあ、返して下さい」と手を伸ばす4号を斧で軽くあしらってまたマジマジと衣装の絵を眺める。
「でもやっぱさ〜、これはいろんな男に目を付けられるって衣装じゃないだろ〜。」
「逆にイッちゃったヤバいヤツがいるって目を逸らすよな。」
「よくいるんっすよね〜、オペラの処を見たら良いか分かんなくって、そうやって衣装ばっか注目している奴。違うんっすよ。オペラの醍醐味は歌なんっすから。迫力のある音楽に、負けず劣らずの歌唱力。役者自身が熱入って歌で競い合ったり、アドリブで急に話展開を変えちまったり。そのリアルな生の芝居に興奮・・・・あああ!!!!!!!」
自分に背を向けて丸まっている双子が全く話に乗ってこないので、何をしているのかと、回り込んで覗いてみると、
「袖はいらないよな、袖は。胸元開けてもっとこう〜ボン!キュッ!ボーン!の衣装にしちゃおうぜ。」
「足も見せちゃおうよ。う〜ん、裂けてるの何て言うんだっけ?スリット??ここら辺から入れてみる?」
「もっと上。そこは極限まで上が良い。」
「ナニやってるんっすか―――!!!そっっ!!それは!!試作じゃなくって、ホントの最終決定の、デ、デザイン画なのに・・・っ!!」
4号の視線の先には、双子が手を加えてしまった衣装のデザインがあった。元のデザイン画は上手くぼかして消してしまい、上から好き勝手に修正している。これを衣装屋に依頼しに行くという大義を任されている4号は顔面蒼白になってガタガタ震えだした。
「え、別にいいじゃん、パロマは舞台には出ないんだろ?」
「あいつの衣装を作るのだって、体裁整える為だろきっと。それならどんなのを注文したって平気なんじゃない?」
「あ。それもそうっすね。」
4号が震えるのをピタッと止めて、双子に同調した。切り替えの早さは仲間内の中でも群を抜いている4号だった。
「俺はどうせだったら背中が開いていた方が〜」なんて言いつつ、双子の悪戯に加わって加筆修正していく。


そして、3人の妄想をふんだんに取り入れられたエロいデザインが出来あがり、それを持って任務に向かう4号を双子は満足げに見送った。


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bkm


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