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「そうだよっ!考えてみたら、あいつ結構の割合でパロマと遭遇してるよね?!いつもだったら寄り道したり、仕事が片付かなかったら泊まり掛けなんて事もあったのに!」
「そうそう〜!あいつのスケジュールチェックしているパロマと会えてるって事は、かなり時間ピッタリに帰ってきてるって事だよ!しかも敢えて正門から!!」
エリオットの内情に触れてしまった双子は、気持ち悪そ〜うな表情に変わった。
「・・・時間きっかりになんか終わんないだろ?普通。なのに、すっご〜く頑張って任務こなしてんだぜ。限定モノのオレンジなんちゃらっとかを買うのも我慢してさ。」
「この前パロマが襲われたのも絶対報告いってるもんね。自分が帰ってくるまで待ってる→危険がその分延びる。なんて方程式が出来上がっちゃってんじゃないの?」
ダムが「フンッ」と鼻を鳴らした。
「そんなのあれだよ、『逃げちゃったけど、後ろはちゃんと付いてきているかな〜?ちょっと待っててあげようかな?』みたいな、パロマがどこまで食いついてくるか試したいっていう、チキンな考え持ってんだよ。ウサギじゃなくて乙女かよっ!!」
「このチキン野郎―!」と屋敷にむかって吠えまくっていたら、逆に屋敷の方からこちらに向かってくる姿が見え出した。アタッシュケースを片手に持ち、ちょっと機嫌が良さそうに歩いてくるのは、
「あ、4号。」
「えっ?ああ、お二人ともお疲れ様っす!」
「通行料を払え。でないとここから一歩も先には通さないよ。」
「えええっ?!?急に何を言い出しちゃってるんっすかっ!」
見る見る汗を湧き立たせているのは、パロマ命名の部下4号だ。双子がニヤニヤと笑いながら近づいてくるのに危機感を覚えてサッと身構える。
「パロマの監視から外れてどこに行こうとしているの〜かな?」
「しっ!!パロマさんには秘密の任務なんっすから!堂々と声に出さないで下さいよっ」
4号が肩を竦めてキョドキョドと左右を見渡す。双子にしたら、そんな4号のオドオドした態度も苛め甲斐があって楽しいと思っているのを、本人は知らない。
「パロマだったら大丈夫。屋敷の中で金魚のフンやってるだろうから。それより、その厳重な鞄ナニナニ?」
「あっコレっすか?こんどやる舞台の発注書とかっす。劇団からの申請でボスの決済が下りたものを今度は依頼しに行く所でして。小切手が使えないっつー小さい店もあるんで、現ナマ持ちなんっすよ。ああっ!マジでちょっと!!勝手に中身漁らないで下さいよ〜!」
涙目になる4号を無視して、中に入っていた書類をゴソッと掴んで目を通す二人。
「何で4号が行くんだよ。そんなの団の奴等にやらせれば良いじゃん。」
「何言っているんっすか。離れの建物っつっても屋敷内に住まわせているんっすから、機密漏えい防止の為に全員監禁状態じゃないっすか。一歩も外になんか出していませんよ。」
「ああ、そうだったね〜、ってこれは何?」
ダムが封書から書類の束を出した所で、その手が止まった。他の書類をペラペラと捲っていたディーがそれに気づいて、覗きに来る。
「ああ、それは本番で着る衣装の注文書みたいっすよ。なにせ役者全員分なんで、枚数が多くて。ボスなんか一枚も見ないでサインしていたような気がするんっすけど。」
「俺だったら、もっと安いものにしろーっとか言っちゃいたいんっすけどね〜」と笑っている4号は軽く無視して、素早くページを捲っていく。すると、
「あった。」


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