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(そろそろ・・・限界かな)
双子が揃ってニヤリと笑う。
優しい言葉だけを掛けて、実際助けないのには理由がある。
斧を手にしてはいるが、エリオットがパロマに危害を加えないのは分かっていた。始末するなら一番初めに仕留めている筈。何だかんだ言っても懐に入れた者には甘いのだ。
自滅すれば良い。
パロマもエリオットも。
そして、二人の距離がどんどん遠くなってしまえば良い。
そんな双子の思惑を余所に、目元をゴシゴシと袖で擦ったパロマがスクッと立ち上がる。
「もう大丈夫ですっエリオットさんを追わないと。」
如何にも泣いてました、という顔でパロマはニッコリとほほ笑んだ。
(あ〜あぁ〜)
―――まだ、諦めが付かないのか・・・
やれやれと、双子も立ち上がる。
「パロマが悪い訳じゃないだろ〜?知らない事だったんだ、誰だってうっかりはあるよ。何度も謝ってんだしさ〜。お前、このまま続けるといつかアイツに殺されるぞ。僕達はそれを心配してんの。」
「お前、屋敷の連中に何て言われているか知ってる?『馬鹿ウサギのフン』だぜ?そんな悪評のままで良いのかよ。劇団の奴らだって痛〜い視線で見てるぞお前の事。」
上げて、下げて、優しさの仮面を被った双子の戦略には隙が無い。大きくはないが着実にダメージを蓄積させているであろうパロマは、グッと結んだ口元が堪え切れずに震えている。それでもーーー
「それでも、やっぱり私が悪かったんだと思います。次のお稽古はメインキャストの通し稽古だから、時間が許す限りエリオットさんの近くにいますねっ」
健気にそう言ったパロマはやはり、エリオットの向かった方へと駆けて行ってしまった。


「・・・・・・っちぇ、パロマのヤツ、っとに言うこと聞かないよね。」
「分かってるくせに自分から墓穴掘りに行ってんだからなぁ〜。」
屋敷に続く道には既にパロマの姿は無い。今頃足の速いエリオットに追いつこうと必死で駆けているのだろう。その姿が容易に想像できて、双子はゲンナリとする。
「馬鹿ウサギめ。調子こいたまま、自爆してしまえ。」
ディーがそれはそれは憎々しげに呟いた。
「うんうん。パロマに愛想尽かされて、大っ嫌いまで降格しちゃえば良いんだよ。」
「パロマを苛めて良いのは僕達だけなんだからな。」
苛立ったまま斧をブンと振り下ろすと、少し離れた竹藪の竹がバサバサッと数本綺麗に斜めに割れて大量の葉を揺らしながら倒れていった。
何気なくそれを見ていたダムが、何かを思い出して口を開く。
「そういえばさぁ〜、どうしてあいつって態々正門から帰ってくんだろ。待ち伏せしてんの分かってんでしょ?パロマに会うのが嫌だったら裏門でも森からでも、どこからだって違うルートはあるだろうにね。」
「「・・・・・・・」」
暫し無言で見詰め合っていた二人だが、同時にお互いを指さして大口を開けた。


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