17
パロマが急いで向かった先、そこは屋敷の正面を抜けた入口の門だった。
屋敷内から外に出る事を禁止されているパロマは、基本的にこの場所には用が無い。遊びに来たアリスをその場所から見送ってからは暫く遠のいていたのだが、近頃足しげく通っていた。
「また、来たか。」
門に近づいてきたパロマにいち早く気付いたディーが、綻びそうな顔を何とか眉を潜めて硬い表情に戻すという何とも表現し難い複雑な顔つきになった。
「はい。また来ちゃいました。」
あまり歓迎していない態度の双子に向かって、パロマがにこやかに頬笑む。
いつもサボりがちな筈の双子が、どういう風の吹き回しかここ最近は熱心に仕事をこなしているらしく、パロマが行くと必ずと言って良い程の割合で門の警備をしている。
「またちょっとの間だけ、お邪魔しても良いですか?」
「いつも言ってるよね?そんなの駄目〜。」
つれない返事を即答する割に、ダムはしぶしぶながらも横にズレて自分の場所を譲ってくれる。
少し前に、この場で双子と並んで立っていたら野盗らしき集団に襲われた事があった。どうやらここが帽子屋屋敷の正面だと知らなかった頭の足りないゴロツキ達だったらしいのだが、双子はそうだと分からせる事も無く、瞬時に片付けてしまった。その戦闘が始まる前に双子のどちらかに腕を引っ張られて今いる場所で身を縮めていろと言われた。
かがんでみて納得した。正面の街道からは少し離れた所に大きな岩が立ちふさがり、双子がいない側の森からは生い茂った竹が立ちふさがっている。つまり、方々の襲撃から一番身を守れる場所だったのだ。
それからというものパロマが正門に現れる度に、双子はその場所をパロマに譲り渡すようにしているらしい。
「邪魔だ」「煩い」とブツブツ文句を言いつつ、さりげなく危険から庇おうとする双子の態度に、パロマは笑顔が隠せない。
「いつも守ってもらっちゃって、ありがとうございます。」
「そう思うんだったら来なきゃ良いんじゃないの?お前のお守りなんてただ働きなんだぞ。過重労働でボスに訴えてやるからな〜。」
「えっ最近重労働なんですか?!この前も怪しい人達が襲ってきましたし、まだ物騒な感じですものね・・・ああ!だから、お二人ともきちんと仕事に励んでいるんですね!」
どうりで怠けるのが大好きな双子が門に行くと必ず居る訳だ。パロマは「納得、納得。」と大きく頷いた。
パロマの大誤解に、二人してこっそり冷めた顔をする。
「お前の為にびっしり詰まった予定を返上して働いてやってんの。武器もない女の子が一人でのほほ〜んとこんな所にいる危険が、何っっで分かんないかな。・・・でもま、忙しいパロマといられる貴重な時間でもあるし?」
「そうそう。パロマが純粋に僕達に会いに来てくれているってんなら、もっと嬉しいんだけどね〜。ほんっと健気だよね、僕ら。」
口元を動かさず二人だけで会話しているので、パロマにはチンプンカンプンだ。


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