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「エリオットさんとユリウスさんの間にそんな過去があっただなんて。」
ブラッドから聞いた話で、パロマは顔面蒼白になった。
パロマの知らないエリオットの過去は、酷く荒んで黒々しかった。
「大罪人として・・・監獄させられていただなんて・・・それを遂行したのがユリウスさんだって、いうんですか・・・?」
「ああ。だから未だにエリオットは自分の前で時計屋の名を出されただけでも、感情を振り乱し、嫌な記憶を呼び覚ました相手を闇に葬る。ずっとそうだった。あいつはこの手の話になると、怒りを抑えきれなくなる。お前みたいに生き残った前例は見た事がないな。」
ドクリとパロマの心臓が波打った。嫌な汗が額から滴り落ちる。
「私だけ・・・・なんですか。生存しているの・・・?」
「ああ。」
ブラッドが事も無げに返事を返した。
(ひぃぃぃぃっっっっ)
「しかし、常に本能で行動をするエリオットが理性を優先させるとは。それだけ自分のテリトリー内にお前が入り込んでいると事か。―――いや、只それだけではなさそうだな。」
衝撃的な事実に打ちのめされている最中のパロマは、ブラッドの呟きが耳に入らない。エリオットが銃を構えた姿が脳裏から離れなくなってしまっていた。
「でっででで、でもっ、そんなちょっと話題に上がった位で、いくらなんでもそこまで酷い事はしませんよね?ボスったらあ、私をからかって楽しんでいるんでしょ?」
引き攣った笑みを浮かべて、ブラッドを見上げたら、
まっったく感情の読めないターコイズの瞳と視線がぶつかった。

「いや?本気でお前が未だに息をしているのが不思議でならない。」


「―――う・・・・う、そ・・っ」


パロマが全身砂化して今にも崩れ落ちそうになっているにも関わらず、ブラッド追撃はさらに続く。
「当面はエリオットに近づくな。ああ見えて執念深いからな。一度は見逃してもらえても、二度はないぞ。厨房には私から話をつけておいてやろう。これでエリオットの手伝い枠が100%空き時間となったのだろうからな。」
ブラッドの低めで落ち着いた声を聞いている内に、胸の動悸が幾分か収まってきた。厨房の許可が下りるとなると、嬉しい反面同じだけ心苦しさも感じる。パロマは上階へと続く階段に視線を流した。
エリオットの態度は竦み上がる程怖かった。
しかし、それは彼がそれ程までに許せない怒りを覚えて、そして何より自分の口から出た言葉傷ついていたのだ。
話が終わって、ブラッドが去っていった後も、パロマは暫くその場から動けなかった。


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