09
「じゃあ、いろいろとありがと、パロマ。」
お土産のチーズに頬ずりしながら、蕩ける様な笑顔でピアスはそう言った。
「今度は堂々と正面から帰って来なくちゃダメですよ?」
「うへぇっ!ヤダよう。門には近づきたくないもん。」
裏庭と森との境界線、パロマ達は今その場所に立っていた。
ピアスが森に帰ると言うので、近くまで送ってきたのだ。と言っても、洗濯部屋からは目と鼻の先なので、すぐに到着する。
チーズばかり沢山抱えているピアスに、もう少し他の物も持たせれば良かったなと思っていると、
「俺、パロマの事、気に入っちゃったな。」
ピアスが恥ずかしそうに下向き加減で呟いた。
「え?」
他に気を取られていたパロマはその囁きを聞き逃してしまったので、小首を傾げて聞き直した。
「そうだ!あんな怖い街に行かなきゃいけないなら、俺のお家に逃げておいでよ。臭くて冷たい所より、ずうっと良いよ?俺が飼ってあげる!」
「飼って、くれるんですか?」
パロマは思わず笑ってしまった。
養家での扱いが酷かった分、同年代の人より自立しているつもりでいた。それなのに、自分より幼そうな人物に養ってやると言われる時がくるだなんて。
ピアスがちょっとだけ膨れっ面になったのは、せっかく思い付いたアイデアが笑われてしまったからか。パロマは横に落ちそうになっている帽子を優しく直してあげた。
「心配して下さって、ありがとうございます。でも、私は舞台をどうしても見届けたいんです。全部終わって時間が出来たら、また誘って下さいますか?」
パロマが見送る場所から一歩も前に出ないのは、森への侵入を禁止されているからだ。
ブラッドの許可が下りるとは思えないが、それでも自分を気に掛けてくれる誘いの言葉がこんなにも嬉しい。
ピアスは「う〜ん、でもぉ〜」と随分と悩んでいたみたいだが、チラッと屋敷に視線を流して、大きくため息を吐いた。
「じゃあ、今は我慢する。でも、これはお礼ねっ」
「?!」



ちゅうっ


prev next

322(348)

bkm


top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -