04
「ええ?!このお屋敷で働いている方だったんですか?!?!」
「そう。俺の名前はピアス=ヴィリエ。ヨロシクねっ。」
お腹が膨れて満足したのかニッコリ笑顔の彼をパロマはシゲシゲと見詰めた。
ピアスと名乗った彼は、屋敷の外で特別任務に就いている構成員だと話してくれた。
「特別任務があるだなんて初めて聞きました。何だか難しそうな仕事ですね。」
自分用の紅茶カップを両手で包んだパロマは、興味津々でそう尋ねた。
マフィアの仕事を実際目にした事が無いパロマには、想像力を働かせるしかない。ブラッドやエリオットはたまに怖い顔をして語り合っているが、基本的にパロマに接する構成員達はにこやかで平穏だ。年端もいかない双子達が最も危険に感じる位だ。
こんな愛らしい青年に出来て、しかも外勤の特別任務とは一体どんなものなのか。
「へへ。誰もやりたがらないから、俺がやっているんだ。すごいでしょ?でも、そんなに難しくないよ。俺の趣味と同じだもん。」
ピアスは紅茶は嫌いだと言っていたので、彼にはコーヒーを沸かしてあげた。自慢げに鼻を啜る彼の前でゆったりとコーヒーの湯気が立ち上る。
「趣味と仕事が一緒だなんて、素敵な環境ですね。主にどんな仕事があるのですか?」
そう聞かれて、ピアスがちょっとだけ悪そうな顔になる。
「聞きたい??」
「え・・・え、ええ。」
勿体ぶる彼の態度に、思わずパロマも肯定してしまう。「実はね〜」と続く言葉を逸る気持ちで待っていたが、
「時計を集めるのが仕事なの。動いているのも、止まっているのも、両方だよ。」
「へぇ〜。そうなんですか。」




・  ・  ・  ・  ・  



驚く要素の無い話に、パロマは至って普通に受け答えをした。
眉を顰めるピアスと、平然と紅茶を飲むパロマ。二人の間に、妙な空白の時が流れた。
「怖く・・・・ないの?」
「?何がですか??」
パロマは心底不思議そうに聞き返す。
ピアスの仕事は思っていたよりも平穏な物でほっとした位だ。
パロマの脳内では・・・
それはそれはメルヘンの世界が広がっていた。
野ネズミに扮したピアスが大なり小なりの時計を沢山抱えて帰って来たのは、大きな木の幹をくり抜いて作ったネズミの家。扉を開けると木で出来た机と椅子と小さなベッド。それにチクタクと沢山の壁時計が主人の帰りを待っていてくれていて―――
(それって絶対に可愛いっ)
パロマはその想像でほっこり笑顔を浮かべる。
「俺の話を嫌がらない子って、初めてだよ。スゴクスゴク嫌いって言われるのに・・・・キミは平気・・なの?」


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bkm


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