03
「ねぇねぇ〜、ここ、寒いよぅ。狭いし床は固くて冷たいし。変な匂いまでするぅ。」
連れられた場所で、彼は真っ先に文句を言う。変な匂いとはパロマお手製のポプリの事だろうか。改良に改良を重ねた自信作を真っ先に否定された。しかし、人の価値観はそれぞれだ。パロマはグッと堪えて、窓から彼を部屋の中に押し込む。
「しょうがないじゃないですか。見ず知らずの人をお屋敷の奥にまで上げる訳にはいきません。」
パロマが案内したのは、勝手知ったる洗濯部屋だ。
裏庭から直結で入れるし、危険な物も金目の物も無い。何かの目的でここまでやってきたのなら今頃パロマの命位とうに奪っているだろうから、そんなに危険な人物では無いのかもしれないが、屋敷に中に入れるだけでも下っ端のパロマからしたらかなりなリスクを負う行為だ。
この場に居る様にと何度も釘を指してから、電気が消えて誰も居なくなった厨房に入り、中からパンや果物を失敬してまた洗濯部屋へと戻ってきた。
「見ず知らずじゃないのに」とブツブツ文句を言う彼に、パンを切って渡してやる。
「うわっ固そう。え?パンだけ??・・・女の子ってみんな料理が出来るんだって思ってたよ。」


―――――グサっ


パロマの背後に言葉のナイフがブスッと刺さる。思わず果物を切っていた手の動きを止めてしまった。
「そ、そう言わずに、果物だったら沢山――――食べていますね。」
振り返ったら、切ったパンをこれでもかっという位頬張った彼がいた。「なに?」と言いたそうだったが、口を開けるスペースが何処にも残っていない。
「ほら、ミルクも飲んで。時間があるのでしたら、ゆっくり食べて下さい。」
苦笑いを浮かべたパロマは温めたミルクも差しだす。そしてフと思いだして、バケットの間をゴソゴソと探った。
「そうだ。少しですがチ」
「チーズだあああああ!!!!」
「え?」
パロマが手にした物が見えた瞬間彼が飛びかかってきて、ドスン「ギャー」ゴロンと二人して揉みくちゃになってしまった。



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bkm


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