02
「ピイィィ―――ッ」
「えっ?ぴ、ぴぃって・・・えぇ?!」
恐怖に駆られて大声を発してしまったが、自分の声と連動する様に可愛らしい悲鳴が聞こえて、パロマはバッと振り返った。
そこにいたのは、ビックリして尻もちをついた青年が。
「あなたは・・・・」
モスグリーンのコートと斜めに被った小さめのシルクハットには見おぼえがある。この前の夜の時間帯に森で見付けた青年だった。あの時は明りも無く分からなかったが、瞳は鮮やかな新緑を思わせる若草色をしていた。
「いってて。ビッックリしたあ〜。胸の時計が止まっちゃうかと思ったよぉ。」
「ご、ごめんなさい。・・・・起き上れますか?」
両足があるのをしっかりと目で確認してから、手を差し伸べた。
「ん。」
小さく頷いた彼は、パロマに向かって両手を差し出す。
返答も仕草も小さな子供を連想させたが、立ち上がった彼はパロマの背丈とそんなに違いが無かった。年齢的にはパロマと同じ位だろうか。
全身をマジマジと見詰めていたパロマだったが、ある一点で視線が止まった。
「・・・・・みみ??」
「?どこかオカシ??まだ汚れてる?」
どうやったって見えないだろうに、頭の上にくっついた耳を下向きにして、そして上を見上げてどうにか見ようと頑張っている。その姿は自分の尻尾を追う子犬の様で愛らしいのだが、
(やっぱり・・・ちゃんと動いている。)
ピコピコと自由に動く耳は玩具ではなく、完全に彼の頭とくっ付いていた。よくよく見てみると、彼の背後には茶色い尻尾らしきものがフラフラと動いている。
幽霊では無かったが、部分的に人間ではない人物、3人目と遭遇してしまった。
「―――ねぇってば。ちゃんと聞いてる?」
「はっはい!えっ?な、何でしょうか?」
彼の容姿に気を奪われていた間、彼の方はずっと喋り続けていたらしい。パロマが全く聞いていなかったのが分かって、頬をプクッと膨らませた。
「だからね?腹ペコなんだってば。早く何か頂戴よ。」
「・・・は、はぁ。」
掌を差し出す彼は、物乞いだろうか。
よく屋敷の警備の合間の縫ってここまで侵入出来たものだ。
タイミング良く彼のお腹がグゥゥと大きく鳴ったので、パロマはとりあえず屋敷へと彼を引き連れて行った。



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