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「アリスは大丈夫かしら・・・・ああっ練習!!!」
夜の時間帯になったら、扱きの鬼が待ち受けている。メインキャストでは無いパロマの為に態々時間を割いてくれているクリスティーヌを待たせてはいけないと、急いで散らばったままの書類を集めに戻ろうとしたら、
「??何でしょうか?」
チョイチョイ指を動かす前と同様の仕草で、ブラッドがパロマにこっちに来いと態度で示している。
「この夜の時間帯はガストン=ブラウンに休講と伝えてある。アリスとの時間を楽しみにしていたのだろう?」
「あ・・・・ありがとう、ございます。」
何の気まぐれだろうか、今夜のブラッドはいやに優しい。パロマは驚きながらも、ブラッドの命に従い素直に彼の側へと近づいた。
「そうだったんですね。それならアリスに泊っていってもらえば良かったな。」
「あいつにいたく執心したあいつの情人が、ここでの外泊を許すとは到底思えんがな。」
彼の言い方が気に入らなかったのか、パロマは頬をプクッと膨らませる。
「情人って・・・・。あの人が勝手に付き纏っているだけですから。彼は私とアリスの仲を裂こうとする、お邪魔なお邪魔虫なんです。」
パロマは憎いウサギの為ならいくらでも口が悪くなる。さも可笑しそうにブラッドが笑い出した。
「ハハ、そう言う時のお前はまさにあいつと瓜二つだな。またアリスに煙たがれるぞ。」
「うっ!そ、それは困ります。・・・でも、そうですよね。いつまでも引き摺っていないで、私も潔く諦めないと・・・。」
パロマからしたら胸一杯に広がる感謝の気持ちを何とかアリスに伝えたいだけなのだが、毎回毎回何故か失敗する。しかしその気持ちの中に、恋人が出来て幸せな彼女に敢えて彼の文句を言う自分の心の狭さも感じてはいたのだ。
真剣な表情で考え込んでしまったパロマに、ブラッドの笑みが固くなる。
「女のお前が何をどう諦めると言うのだ。―――まぁいい、兎に角ここに座れ。」
ブラッドが膝をポンポンと叩く。その仕草で苦い経験を思い出したパロマは、ギクッと一歩後ろに下がった。
「ななな何故、ですか・・・?もうあの試練は終わったんですよね?」
「いいから、座れ。」
「うぅ・・っ」
反抗してもどうせまた言い包められてしまう、とパロマは早々諦めた。おずおずと膝の最も先にちょこんと座ると、やっぱりと言うか、パロマの逃げ腰をガッシリと捕まえて深く座り直されてしまう。
これで逃げ道は断たれてしまった。
今度は何が始まるのかと戦々恐々のパロマがカチンと肩に力を入れていると、
ブラッドがパロマの頭をガシッと掴んでワシャワシャと掻き混ぜ出した。
「ちょっ!!ボ、ボス、何やって・・・キャー!や、止めてっ髪がっっ!!」
パロマの目を船酔いの如くグルグルに回し、髪を爆発的に散り散りにしてやっと満足したのか、ブラッドが会心の笑みを見せた。
「よし、これで良いだろう。」
何が良いのかさっぱり分からない。パロマは、はてなマークを大量に飛ばしながら、散々に乱れた髪をおっかなびっくり撫でつけた。


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bkm


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