22
それ程、大衆を引き付ける容貌だろうか。
確かに整っているとは思う。
ブラッドが意識のあるパロマと初めて対面したは、接客室と言う名の監獄。役無し達に身柄を拘束されて全身ずぶ濡れで現れたパロマは、これから何が始まるのかと見る物すべてに怯えていた。
その小刻みに震える情けない腰抜け姿はまるで無抵抗の小動物の様で嗜虐心を大いに抱かせられたが、それよりもその後の鈍臭さが目に余り過ぎて、今では容姿どうこう等気にも留めてはいなかった。
しかしそうは言っても、無警戒でフラフラと出歩かれるとこっちが気が気でないから常に監視をつけて周りには目を光らせてはいるが。
ブラッドが物思いに耽っていると、アリスがチョンチョンと肘で小さく突っついてきた。
「ねぇ、それはそうと、パロマがずぅ〜っとこっちを気にしているみたいなんだけど。知ってた?私達の仲が良いと、パロマ側からしたらすごく不安なんじゃなぁい?」
そう言われて、また視線をアリスと同じ方向に向けると、今度はバッチリとパロマと目が合った。・・・が、


すぐに逸らしてやった。


それから何食わぬ顔でニコヤカにアリスへと向き直る。
「何の事だか。私はペットを共有する程器の大きい人間ではないのでな。」
アリスのフォークに刺さったケーキがポトッと皿に落っこちる。
「あっきれた。」
あんぐりと口を開けたアリスはやっと事の次第に気付き始めたのか、「そっか、そういう事なのね」と何度も頷いた。
「おかしいと思ったのよね〜。何でこんな話題で笑顔なのかなって。文句も言わずに最後まで聞いているし。全部見せ付けてたって訳ね?あそこまで距離があれば、皮肉な笑いも親しげな微笑みにみえちゃうわよね〜。・・・ああ!だからこんなに席が近いの?!」
「芸が細か過ぎよ!!」と文句を言って、アリスは椅子を素早くずらした。
「あ〜あ〜、見てあの顔。絶対落ち込んでるわ。また双子に弄られちゃっているし。―――このままお城に連れて帰っちゃおうかしら。」






「アリス。」






アリスの肩がビクッと上がる。
ブラッドの熱の無い声が短く発せらた。


prev next

298(348)

bkm


top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -