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「今の話の中に百人切りの要素があったのか?まるで絵に描いた様な惨めな生い立ちだな。」
沢山話してやっと一息つこうとした所でブラッドから淡々と感想を述べられ、アリスは喉に紅茶を詰まらせた。
「うっ・・・・ゴホッ!っそこに注目しないでよ!初めて出会った時はまぁ・・・そんな風に見えなくも無かったけど。でも、それから長く友人でいるから分かるけど、追い掛けられるのは、ほら、有名人が街を歩いて偶然見付かっちゃったみたいな感じなのよ。あの子オペラで散々街中を騒がしておきながら、本人はケロッと無防備に街を歩いているものだから、ファンに見付かって人が人を呼んでってなっちゃってね。大概一人で歩いているものだから、隙が多過ぎるのよね〜。あれだけ可愛いと、いかにも悪そ〜うな人達にすぐ目を付けられちゃうのよ。」
「・・・・ほぉ〜・・・?」
「その顔は信じられないって顔ね?学園にだって、パロマを狙っていた人がいっぱいいたんだから。でも、あのインチキ学園っ!お金欲しさよね、生徒なんて大半が寄付金をたんまり寄こす名家の出なのよ。身分が違うからって、孤児のパロマを馬鹿にして掛かっていて。み〜んな本気で好きなのよ?きっと。なのに、その気持ちを誰かに知られたら上流社会から爪弾きにされる〜って臆病風に吹かれていたのよ。だからパロマの事は誰も真剣に相手にしてくれなくって。・・・・ああ!今思い出してもムッカムカするわっ」
半信半疑で話を聞いているブラッドの横で、アリスが冷めたミルクティーを一気に飲む。
そしてまだ喋り足りないのか「でもそれだけじゃないの!」と高揚した気分のまま、また口を開いた。
「パロマの男運の無さって生まれつきなのよ。もう誰が一番怖いって、あの子の養家の義理弟がスバ抜けて最っ悪なの。パロマは血の繋がりが無いから嫌われているって思っているけど、あれは逆にそれを喜んでいるわね。拘束っぷりが凄かったわ。パロマの交友関係、外出時間、着る服にだって口を出していたのよ?袖が短いだの、足が見えているだの。パロマが息苦しくなる訳よね〜、家に居場所がないって本気で悩んでいたわ。私、彼と何度か街ですれ違った事があるんだけど、いつもすっごい目で睨んでくるの。ホントの恋敵みたいに。私は同性ですけど?って何度も言ってやりたくなったわ。」
「それはそれは。」
「・・・・・ねぇ、本当に信じてないでしょ・・・。」
アリスは何だか懸命に話しているのが馬鹿らしくなってきた。その位、ブラッドの話を聞く態度がよろしくない。話し始めからにこやかに耳を傾けてタイミングで相槌を打っているが、それがどうにもワザとらしくてホラ話と決めつけてせせら笑っているとしか思えない。
「別に良いわよ〜。私は忠告したんだからね?パロマを軽くあしらっていると、後で痛〜いしっぺ返しを喰らうのはそっちだから。」
「それは興味深い。仔猫から引っ掻かれた程度の痛みだろうが、あいつからのだったら受けてやっても良いな。」
馬鹿言わないでと、アリスはしかめっ面をした。ブラッドはそれに対して含み笑いで紅茶を嗜み、チラリと話題の人物へと目を向ける。
(それにしても―――)


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bkm


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