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「なんで。」
妥協案をせっかく思い付いたのに即否定されて、アリスの片眉がピクリと動く。アリスの機嫌が少し悪くなったのを敏感に察したパロマが手ぶりも付けて必死に言い訳をし出した。
「私、フォークナーと名乗っていますが、噂通り本当は貰われっ子なんです。だから生粋の貴族の方達からしたら、私なんてすごく目触りなんだと思います。私なんかと友達になったら、社交界から爪弾きにされてしまうって誰も私には寄りつきません。あそこで友人を作るなんて大それた夢、怖すぎて持てません。」
「じゃ、学園でずぅぅっと一人な訳?」
「はい。」
「一人ぼっちだなんて、寂しくないの?あんたはそれで良いの?!」
「え?ええ・・・・いえ、本当はちょっと寂しいです。」
「なら、後輩でも、何なら男の子でも良いから仲良くなりなさいよ。その大きな身分の違いを乗り越えてくれる優しい王子様が一人位いるんじゃないの?!」
「えぇ?!そんな事、考えた事もありませんでした。・・・・そうですね・・・・うぅ〜ん、でも・・・・いない、かな?」
「なんで??」
「ひぃぃっ!すっススススミマセン!!」
アリスの機嫌がさらに増して悪くなる。パロマからしたら命を救ってくれた素敵なお姉さんと仲良くお喋りがしたいのに、話はどうやってもこんがらがって迷宮入りしていく。
「だって学園中で王子様って呼ばれている人にも追い掛けられるんですよ?!しかもすっっごくしつこいんですっ。誰も止めに入ってくれないし、逆に人を使って追い詰めてくるんです!もう訳が分からなくってっっ。・・・専攻も違うのに、どうしてそこまで嫌われてしまったのか・・・。」
「へぇ〜・・・それが?・・・王子様??」
王子様が聞いて呆れる。逆に弱い者苛めをして楽しんでいるだなんて。いや、もしかしたらパロマからはそう見えるだけかもしれない。初めて目にしたアリスにだって、パロマの容姿は可憐で儚げに見える。それが異性からしたら、しかも同じ敷地内でちょっと伸ばせば手に届く範疇にいたのだとしたら、どう思うのだろう。アリスにはそこにその王子様のパロマに対する只ならぬ愛執を感じた。
「学園内も危険が一杯じゃない。そこまでされても勉強、したい?知っているだろうけど、街中であんたの悪い噂が流れているわよ。大人しく家に帰って講師を雇ってもらえば良いじゃない。」
「それは絶っ対に無理です。」
「何なのよ!もお!!!」
初対面なのに、何を言っても良い返事が来なくて、アリスのイラつきがマックスになった。
それに比例して、パロマもどんどん委縮していく。唇がアワワアワワと震えていた。
「ごごごごめんなさい!やっと家から出て来たというか、飛び出してきたというか。私、あの家に居場所が無いんです。・・・・あの、フォークナー家の中にいたら」
「それ以上は喋らなくても良いから。」


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bkm


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