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―――馬鹿ばかしい・・・



「何、あれ。パロマってあんなに天然だったの・・・?」
部下達の幼稚過ぎる態度に呆れ果てたブラッドの隣で、アリスはパロマを凝視したまま口に手を当てて驚いていた。
「お前の教育が行き届いていないからああなったんじゃないのか。飼い主なら飼い主らしく怠けていないで一から躾直せ。」
堂々とそう言い切ったブラッドは「ノウハウ本でも買ってやろうか?」とまで続けてニヤリと笑う。急にすべてを自分のせいにさせられて、気を害したアリスは猛反撃に出る。
「パロマがフェロモンダダ漏れなのは私のせいじゃないし、飼い主じゃないし、大体パロマと二人でそんな本見てどうしろっていうのよ!!」
「冗談だ」と、ブラッドは笑って答えたが、全然目が笑っていない。
あわよくば初心なパロマを躾直してくれればと本気で思っていそうな顔をしていた。
「簡単に言ってくれちゃっているけど、元いた世界であの子、それはそれはすごかったのよ?『瞬殺の百人切り』って言われていたんだから。あの子がああなのは、私と出会う前からなの。」
「百人切り?あの見るからに弱そうななりでか?随分噂ばかりが先行したものだな。―――ああ、お前の滞在地の一角を再起不能にしたのも、結果的にはやつの仕業か。」
真剣に取り合わないブラッドにイラついて、アリスが音を立ててカップをソーサーに置く。
「そうじゃないの。百人切りはものの例えで、その位あの子が人の心を掴んでメロメロにしたって過去があるのよ。」
ブラッドが胡散臭そ〜うな視線をアリスの寄こす。アリスの先に空いた食器を下げようとしていたパロマが視界に入り、彼女は肘が当たってディーのカップをひっくり返しペコペコ謝りながら焦って片付けていた。
「百人切りねぇ・・・・ほ〜ぅ?」
「その目は信じてないわね?じゃあ、話してあげるわよ。あの子自身が作ったって言うか、回りの取り巻き達が作ったって言うか。良い意味でも悪い意味でも話題騒然だったんだから。」




   アリスの回想〜過去・・・

またあの少女が街中を走っている。
アリスは夕方の市場へ買出しにきていた。出店の商人が売り切れ御免と大声を張り上げ、残りの品を売り捌こうとしている。夕暮れ時のこの時間帯は、行き交う誰もがどこか忙しげだ。その中でアリスは新しい書籍を漁りに来ただけなので、取り立てて急いでいなかったせいか、異常な早さで駆けてくる少女に目を留めた。


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bkm


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