07
帽子屋屋敷の大きな正門、二枚扉の対面には赤い帽子と青い帽子の容姿がそっくりな双子と、その二人の中央にはソワソワ動く1人の少女がいた。
ゲリラライブの一件は軽く流して何事も無かったかの如くさらりと職務に戻ったディーとダムは、白けた視線を自分達の間に割って入ってきた彼女に向ける。
「パロマ・・・。何でお前がここにいんのさ。ハッキリ言って仕事の邪魔なんだけど。」
「それとも何、配置換えしたの?これから僕達と一緒に門番やる?」
「あ、ごめんなさい。すぐに退くのでもう少しだけ良いですか?」
人待ち顔で遠くを眺めていたパロマは、二人がちょっかいを掛けてきても言葉の棘に気付かず笑顔で答える。そしてすぐにまたキョロキョロと辺りを見渡し出した。
「こいつの態度。さてはお姉さんが遊びに来るな。お姉さんいつまでいるの?僕達と遊ぶ暇ある??」
「パ〜ロマ。おお〜い!話し掛けてんだけど?!・・・駄目だ。全っ然耳に入って無い。」

森を二つに割った一本道は遠く薄暗い先まで人影は無い。しかし、パロマは主人の帰りを待つ子犬の様に直立不動で前を見据えていた。
「こいつ・・・面白くない。」
口にしたのはディーだが、ダムも同じくムスッと仏頂面になった。
パロマが進んで正門にやってくるなんて、ある様でなかなか無い。二人はちょっと嬉しかったのだ。それが散々仕出かした悪戯に対する怒りを発散させる為のものでも、切羽詰まった顔で上司命令を言い渡しに来ただけのものでも良かった。パロマにも自分達だけに意識を向けて、自ら近づいてきて欲しかった。そう思っていた最中、可愛らしくちょこんと真中に収まるものだから―――
頬が上気して可愛いには可愛いのだが、全く自分達に振り向かないパロマ。それはまるで存在を無視されたみたいで
――――気に食わない・・・!
パロマとは真逆に虫の居所が悪い双子は、彼女に対してちょっとした悪戯を仕掛ける事にした。


「パロマ、そこ足元が危ないから、ちょっと前に出た方が良いよ?」
「え?」
ダムが指を差した方向、そこはパロマの少し前の生茂った雑草で埋め尽くされた場所だった。眉を顰めて神妙な表情で告げてきたがしかし、何度も何度もコテンパンに騙されているパロマは、そんな嘘っぽい親切は信用しない。
「そんな事言って、どうせ落とし穴とか仕掛けてあるんじゃないですか?もう騙されませんからね。この前だって、洗濯物を干している時に泥に塗れてさらに小麦粉塗れになっちゃって落とすの大変だったんですから。」
双子はその時のパロマの醜さを思い出して、思わず吹き出してしまった。あの悪戯は大成功だった。その後の夢の中でナイトメアと宴会を開いてしまった程に。
笑いが収まらない二人に、パロマの頬がプクッと膨らむ。
「それに、コンサートの事だってボスにすっごく叱られたんですよ?!貴方達もちゃんと反省して下さ―――えっ、ど、どうしたんですか?」
ディーとダムがそれまでの態度を一変して、森に続く街道を鋭く睨む。パロマは彼らの殺気に気付いて、同じ方向を怖々見詰めた。
「兄弟、何か近付いてきているね。何だろう・・・」
「うん。1人じゃないな。パロマは危ないから一歩下がって。―――そこじゃ流れ弾に当たるだろ、もっと右だよ、右。」
パロマは視線を前に据えたまま言われるがままに移動すると、ガチッと何かが足に噛みついた。
「いっっっっ!!」
鋭い痛みが素早く足首に響き渡る。
「たたたたた!!!!なっっっん、何これっ?!?!?!」
パロマは痛さにしゃがみ込んで自分の足を確認した。するとそこには動物を仕留める為の罠が、自分の足に噛みついていた。
「ぶわっははは!また騙されてやんの!アホ!!」
双子はしゃがみ込んだパロマを指で指して笑い物にする。
ブチっ―――
パロマの怒りのバロメーターは一気に頂点を振り切った。
「もぉおお!ふざけてないで取って下さい!!痛いじゃないですか?!」
「良く見てよ。パロマ用にちゃんと刃は削ってあげているんだから、そんなにきつく噛んでないだろ?自分でもとれるよ。」
「そんな事言ったってっ・・・きゃっ!いったぁい!」
パロマは左足に噛みついた罠を両手で思いっきり広げようとしたら、ガバッと開いて今度は左腕に噛みつかれた。それは片手では中々取れない。四苦八苦しているパロマを手伝いもせずに双子はゲラゲラと笑っていた。
「お前、ホント馬鹿だな〜。自分で罠に嵌まるなよ。僕達のお腹を捩れさせる気か。」
ディーが涙ながらもパロマにちょいっと手を貸してくれた。するとすぐさまパカッと罠は開いた。助けてくれたとしても、パロマの腹の虫が収まらないのは当然の事だ。拳骨を震わせながら立ち上がると、


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