03
急いで廊下に出て指示通りに裏庭へ向かおうと向きを変えると、向かう先に同僚がいる事に気が付いた。
そして彼女もパロマに気が付いて、急にこちらに向かって走り出した。
「??」
彼女が余りに必死な形相をしていた為暫し見守っていたら、何とパロマの前で
「パロマ〜!!!」
ピタッと止まった。
「やっと練習終わったのね?!早くこっちに来て!!」
まるで逃がさないぞという力強さでパロマの腕をむんずと掴み、来た廊下をまた戻ろうとする同僚。パロマはその勢いに押されて思わず付いて行きそうになったが、クリスティーヌの世にも恐ろしい顔が頭を掠め何とかそれを阻止する。
「ちょっ、ちょっと待って下さい!まだ練習がっ」
その言葉が耳に入った同僚の振り返った顔が般若に変わった。パロマは思わず「ひぃっ」と息を飲む。
「部屋から出たら練習終わりって決まりよね。こっちはずぅぅぅっと待ち惚けなのよ?好い加減にして頂戴。」
「いっいえ、夜の時間帯は公演の練習にあてられていて・・・あのっ本当にごめんなさいっ」
同僚のキレた表情が怖過ぎて、パロマは自分が悪い訳では無いのに何度も頭を下げて謝った。同僚はチラッと窓の外に目を向けて月が夜空に輝いているのを確認すると、人相悪く「チッ!」と舌打ちした。いつものほんわかしている風貌からは想像も出来ない荒れっぷりだ。
(ひぃぃ〜!!)
「あああっもううっっ!!パロマの仕事が溜まりに溜まって、こっちにすっごいしわ寄せがきているのよ!どうしてくれるのよぉ!!!」
頭を掻きむしる勢いで一人ごねた同僚は、「それじゃあ、時間帯が変わったら真っ先な私の所まできて!約束だからね?!」
と強引に約束を取り付けてから、足音荒く長い廊下の先を曲がっていった。
「・・・・」
何が起きたのかと、彼女の消えた廊下の角を眺めていたら、今度はバタバタと別の二人の同僚達がその場から現れた。
「「パロマーーー!!!」」
何だかデジャヴの様に嫌な感じがする。
二人は「私の仕事の方が先よ!」「勘弁して!こっちは大至急なんだから!!」と小競り合いながら走り寄ってくる。
表情まで先程いた同僚と瓜二つだから、この後に待っている展開が嫌でも分かってしまった。
パロマは何だか無性に泣きたくなった。




―――お、鬼〜〜〜〜〜・・・・






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bkm


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