04
後から来た同僚達を何とか振り切り、やっとの事で辿り着いたのは真っ暗に静まり返った裏庭。
洗濯物が風にはためいているわけもなく、ポールだけが寂しげに立っていた。
冷たい三日月が雲に隠れたり、現れたりしている。
裏庭から続く森の奥深くからホゥホゥと梟の鳴き声が微かに聞こえた。ザワザワと夜風に揺れる森の木々は、恐ろしい怪物の揺らめく手の様にも見える。
寒くはないのに、パロマの身体がブルッと震えた。
裏庭まで出て来てみたものの走り回るにはそぐわない時間帯に、パロマは回れ右をしたくなった。
「ここってこんなに広い庭だったかしら・・・。先は暗くて何にも見えない。うぅ〜・・怖いよぅ〜・・・。」
しかし、クリスティーヌ先生の目がどこにあるか分からない。せっかく講師まで付けてくれたブラッドにも立つ瀬がない。パロマはしぶしぶながらも出来るだけ明るい場所を探しながら走りだした。
5周を回った所だろうか、除々に息切れしてきたパロマはあまり怖さを気にしなくなり、前を向いて只管に走っていたが、森の方からか弱いハミングが聞こえだしたのに気付いた。
それまで忘れていた恐怖がブワッと溢れ出す。
屋敷側を走っている時は良いが、森側になる時は聞き間違いだと言えない位ハッキリとその声が聞こえて、鼓動が運動の為以上に激しくなった。
(ここここ怖い!!絶対何かいる。しかも歌う何か。もしかして・・・もしかするもの!?)
耳を澄ますと、ザックザックと土を掘る音も聞こえるのが分かった。
何を埋めているのだろう。
もしくは探しているのだろうか。
パロマは聞きたくないのにどうしても聞き耳を立て、近付きたくないのに吸い込まれる様に森の中に入ってしまった。



彼女は草を分け行って、恐る恐る音の出元を探す。ちゃんと足があって透けていなくて、兎に角人間である事だけ確認したかった。そうでなかったら夜の時間帯は一歩の外に出られなくなる。
しかし、もし本当にそうでなかったのなら・・・


ゴク・・・・ッ


今回だけは腰を抜かせない、パロマは気を引き締めた。
生い茂った雑草を掻き分けて前に進むと、
か細い鼻歌は目の前の大木の後ろから聞こえてくる。パロマはゴクッと唾を飲み込んで、そぉっと覗いてみた。
小さな少年が1人、背中を向けて穴を掘っている。
頭にはパロマが今まで見た事もないまぁるい物体が二つ付いていた。
「フフフ。見ぃつけた。ここにもあった誰かの心臓ぅ〜。―――ピ?そこにいるのは、だぁれ?」
斜めに被った帽子のせいで片目を隠した少年は、暗闇の中泥で汚れた何かを手に持って後ろをゆっくりと振り返った。
「きゃあああああ―――!!!!!」
パロマは目的だった足があるかの確認をするのも忘れて、砂埃を盛大に立てながら一目散に屋敷へと逃げ帰った。


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