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「舞台には立たせない。ま、その前に立てないだろうな。いくら上手く歌えたとしても、結局は素人レベル。本場で経験を積んだプロの役者に囲まれては、主役の座は荷が重いだろう。屋敷の雑務の時間は減らしても、量までは減らしはしない。二足草鞋ではすぐに音を上げる。」
一瞬呆けたエリオットだったが、ブラッドの言わんとする事が分かって、納得げに頷いた。
「練習だけは参加させて、その後あいつの夢をこっ酷く打ち破るって寸法か。なるほどねぇ〜。」
「夢は飽く迄夢物語り。それが自ずと分かれば、これからの屋敷に対する献身度合いも高まるというものだ。」
「オールドソーンズの復興とパロマを絡めて考えられんのがすげぇよ。」と素直に驚いているエリオットは、自分の机に振り返ってギョッとした。
「つぅか俺の机ひどくねぇか?!ここまで仕事を溜めこんでたっけか・・・?」
見た目は誰よりも不真面目そうだが実はこの男、人一倍の働き者だった。屋敷から離れる仕事が激増したが、デスクワークも余った時間を駆使してこなしていた筈なのに、机の上は驚異のバランスで何層にも積み重なった書類が山と化している。
「早く取り掛からないと、すぐにもうひと山積み上がるぞ。最近はやっかい事が後を絶たない。少しは手伝ってやったが、お前の溜まった仕事が私にも飛び火して迷惑だ。」
ブラッドは平然とそう言ってのける。
上司に自分の仕事も請け負わせたのかとまんまと騙されたエリオットは、焦りながら自分の机に向かった。
「やっべ!!それは済まなかったな。ブラッドは終わったんならそこで休んでいろよ。この山は・・・どこが始まりなんだ?」
うず高く積った書類を上から下から覗くエリオットに、ブラッドは見えない所でニヤリと笑う。


―――ちょろいものだ。





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bkm


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