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「やらせて下さいっ!!貴方の顔に決して泥は塗りませんっ絶対に満足させてみせます!」
パロマは悩まず即答した。
まかさ、この世界で自分の力を試せる時が来ようとは。
知識も技術も十分に磨いた。学園という枠から外れたら1人の歌い手として世間でどこまで通用するのか、それはパロマの知りたくても知ることの出来なかった、答えの出ない問いだった。
彼女の決意を見てブラッドも頷く。エリオットがニカッと笑ってパロマの頭をガシガシと撫でた。
「口先だけで終わるなよ?夜の時間帯は仕事から解放してやる。専属の講師を付けてやるから死ぬ気で学べ。役者が決まったら合同練習に移るから、それまでに足元を見られぬ様完璧に暗記しておく事だな。」
「はい!ありがとうごさいます!私っこのチャンスを必ず物にしてみせますね!!」
興奮で頬を真っ赤に染めたパロマはギュッと台本を握り締めて、パタパタと走り去っていってしまった。給仕の最中だったワゴンも忘れて。一つに心を奪われると他の事はすっかり忘れてしまうのは、彼女の悪い癖だった。
「まぁたあいつは仕事放り投げやがった」と、エリオットが腕を組んでドアを睨む。それからブラッドに振り返り、疑問に思った事を口にした。
「・・・チャンスをモノにするとかほざいていやがったが、別にどこかの劇団にくれてやる訳じゃねぇんだろ?」
長い間ブラッドの下にいるエリオットは、パロマよりは上司の魂胆を見抜く才に長けていた。
「当り前だろう。」
エリオットは「やっぱりな」と呟く。
近頃鞭ばかりが多かったからたまにはペットに好物を与えてやっただけ。首輪を外して自由にする気は微塵も無い。
「誰がそんな事を言った?勝手に誤解をしてやる気になっているなら、そのまま放っておけ。」
「ま、いつかは気付くか。」
頭をワシャワシャとかき回しているエリオットに、ブラッドはフッと笑う。
「と言うか、疑似体験をさせてやるだけだ。舞台に立たせるつもりもない。」
「・・・・ああ?」


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bkm


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