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ハイグレードの専門家にこれまたハイレベルの茶葉を使って紅茶を淹れ直させ、やっと満足したブラッドは、今度は茶菓子の準備に勤しむパロマに向かって徐に声を掛けた。
「お前、少しは双子に対して抵抗力を身に付けた方が良いんじゃないのか。このままではやられ放題で最後は熊の餌にまでされてしまうぞ。」
「えっ?!そ、それは困ります!」
パロマは動揺でガシャンと食器を鳴らしてしまった。ハートの国にいた時に実際熊に襲われた経験があるパロマは、その恐怖の記憶のせいで見るからにブルブルガクガクと震え出した。まさか双子もそこまで悪さはしないと思うが、ギリギリのおふざけは仕出かしそうな気がする。確かにあの兄弟ならそこまでやってもおかしくはない。
パロマは熊に扮してがぉ〜と襲って来る双子を想像して青くなっていると、それを見ていたブラッドが一つ提案をする。
「私がその鍛錬に一役買ってやろう。これから私の命令には何が何でも抵抗してみろ。」
「は?はぁ・・・。分かりました。従わなければ良いという事ですね?」
(何かと思えば、簡単じゃない。ボスもたまに子供っぽい事を考えつくわよね。)
意外と可愛らしいなんて思いながら、パロマは精緻な作りのシェルディッシュにクッキーを乗せていく。今回のお茶菓子は、粉砂糖がたっぷり振りかかったブールドネージュに、カラフルで可愛いマカロン達だ。屋敷内のパティシエが作る繊細なお菓子は、恐らくお店で出しても大好評だろう。銀のトレイから少しずつお皿に移して机の上に置くと、ブラッドがパロマに向かってチョイチョイと指で招いた。
「おい、そこの奴隷。ちょっとこっちに来い。」
「はい。何でしょう?」
ひょいひょいとブラッドの脇に着くパロマ。彼の呆れた眼差しに、ハッと自分の失態に気付く。
「お前・・・理解する脳が無いのか。言った傍からどういう事だ。」
「すみませんっすみません!今ちょっとお菓子に目を奪われていました!今度こそしっかりやります。」
理解していた筈なのに、すっかり地が出てしまった。ブラッドの自然な命令に、身体が素直に反応してしまったのだ。慣れとは何とも恐ろしい。
真っ赤になって謝るパロマに、ブラッドは本当だろうなと疑いの目を向ける。
「―――まぁ、いい。ここに座れ。」
ブラッドが自分の膝をポンポンと叩いた。


(・・・・・はい?)




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