08
しどろもどろで説明するパロマに、ブラッドは苦々しくチッと舌打ちをする。
どうせ双子にうまく出し抜かれてしまったのだろう。手を変え品を変え、次から次へと悪事ばかりが思い付く、あの兄弟の思考回路はどうなっているのだろうか。しかしそれ以上に、毎度毎度馬鹿正直に乗せられてしまうこの女に、苛立ちが隠せないブラッドだった。
「学んでまで手に入れた唯一の才能を、本来の志とはまるで掛け離れた方法で無駄にひけらかして、それで満足なのか。平平凡凡のお前にはもったいない程の特技がすべて台無しだな。」
全くもってその通りなので、パロマは言い返す言葉も無い。ぐうの音も出ない彼女は肩身を狭くするだけだ。
「お前、最近奴隷のくせに随分行動が派手になっていないか?借金程度では身が引き締まらないのだろう。それならそうと身分に似つかわしい職を探してやらなくもないが。」
「身分に・・・似つかわしい、職?」
考えもしなかった言葉に、パロマは伏せていた顔をハッと上げる。
「想像がつかないか?奴隷で女と言ったら・・・・稼ぎ方は山とあるだろう?」
暗に他所へ売り飛ばすぞと脅されて、パロマの握った両手がビクッと震えた。頭の中は様々な悪い可能性が渦を巻いているのだろう。
ブラッドはもちろん何処かへやるつもり等さらさら無かったが、ただパロマを脅えさせる為だけに言葉を紡いだ。
「ここでの肉体労働より、ある意味お前に合っているかもしれないぞ。」
「ボス・・・・・・」
小さい声しか出ないパロマは、まるで置いて行かれそうな子犬の様に傷付いた顔をする。
「本当にごめんなさい。ちゃんとお仕事しますから・・・」
嘘偽りで成り立っているこの黒い社会で、彼女だけは人の言葉を疑いもせずに鵜呑みにする。ブラッドはそんな彼女だからこそ、側から放したくはないのだ。屋敷の面々も彼女の内から溢れる明るい光に吸い寄せられてしまっているのだろう。
だからと言って、他の者にまで絆されるのは面白くない。
「だったらすぐに取り掛かれ。ボサッと立っている時間等、ペットのお前には一秒も無い。」
パロマは「はいっ分かりました!」と返事をして、いそいそとお茶の準備に取り掛かる。どこかホッとしたのが態度で丸分かりだ。
何の変哲も無い仕事着、動きやすい為の高くひっつめただけの髪形。化粧に凝る訳でも無く、面白くも無い真面目の一辺倒。
(夢の中ではあんなに可憐で儚げだったが・・・。現実は色気も素っ気も無い。もう少し夢の中で玩んでおけば良かった。)
何気なしにパロマの仕事姿を見ていたブラッドだったが、いやまてよ、と思い直す。



―――玩ぶなら現実でも、ここに良い玩具があるじゃないか。






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