07
「すすすみませんでした!!本当に浅はかでした。ごめんなさい!」
何度も謝るパロマに、煙草をふかしたブラッドは目もくれない。
窓もキッチリと締めきりカーテンも引いてしまえば、二人しかいない仕事兼書斎部屋は外の喧騒が嘘の様に静まり返っていた。直立するパロマの隣にあるワゴンの上で、慌てて準備してきたポットから、ゆったりと湯気が立ち上っている。
パロマはチラッと横目でドアを見たが、人がいる気配は一切しない。裏切ったエリオットはまだ双子を見付けられないのか。
しかし、パロマはそれもどこか諦めていた。
小さな音にも敏感な彼でさえも、あの二人の気配を察して見つけ出すのは至難の業だろう。用意周到な兄弟は、至る所に数多の逃げ道を準備してある筈だ。
同僚達によって無理矢理屋敷に連れ込まれたパロマは、この格好では示しが付かないと普段の仕事着に改め、ブラッドの仕事部屋に出頭してきた所存だ。
そして今現在無言の仕打ちに、ただ只管、耐えている。
「二度とこの様な事は致しま・・・せん、ので・・・・・」
重い沈黙のせいで、パロマの声のトーンが尻すぼまりになってしまう。
(なんで私だけ怒られるの・・・ボスのオーラが刺す様に冷たい・・・立っていられない〜)
パロマは心の中で狡賢い双子を呪った。いつもそうだ。悪だくみは双子が仕掛けて、気付いた時には自分もその悪だくみの片棒を担がされ、最後に怒られるのはいつもパロマだ。ブラッドは頬杖から顔を少し上げて、やっと視線を彼女に向ける。
「お前は囀るのを得手としていたな。得意分野は何だったか。」
この部屋に入ってから初めて話しかけてくれたので、彼女はハキハキと答える。
「はい。声楽科での専攻は主にオペラ楽曲で、学園主催のオペラ公演ではプリマドンナを何度か演じ、高い評価も頂きました!」
「その舞台のソリストが・・・・どこでどう転べばデスメタルのヴォーカリストに成り変わるんだ!!!」
ブラッドの激昂がパロマの鼓膜を激しく震動させた。
「はっはいいぃ!本当にどこをどう転んだのでしょうかっ。同僚のリクエストに答えていただけなのに、そうこうしている間にどうしてだかこういう事になっていて・・・。」
言い訳最中にギラリと睨まれて、パロマは途端に竦み上がる。



(こ、怖いいいいっっ)


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