06
「パロマ、後は任せた。」
「お前の役目は責任重大だからな?しっかりやれよ〜。」
裏庭は地獄絵図の大惨事だった。
怪我をした者、それを助ける者、瓦礫の山を掻き分ける者と、その瓦礫の中から必死に手を伸ばす者とで、戦場の跡地は突如現れたエイリアンの襲来を受けた可哀想な地区さながらだった。。
ペンギンに扮した部下3号が舞台に出来た穴に落ちて巨体が見事にスポッと嵌って動けなくなり、それを助け出そう右往左往していたパロマの背中を、ディーとダムがポンと叩き、身勝手な任務を言い付けてきた。
あまりな理不尽さに、ちょっと這い上がりそうになっていたペンギンの手を無意識に放して急いで振り返ったが、
「えぇ?!ど、どういう事ですか?まさかまた私1人にこれを全部押し付けるつもりじゃ、ってもういないっ!!!」
双子の姿はすでに無かった。そしてペンギンも自らの重みでさらに深くピタッと嵌る。
パロマが方々見渡してもこのゴタゴタの中に紛れてしまったのか、双子の持つ斧の先さえ見当たらなかった。
(まさか!本当にそのまさか?!いっっつも、私に責任を押し付けてどこかへ逃げちゃうんだから!!)
小賢しい双子は悪事がバレるとすぐさま連携して、後始末はパロマにポイっと擦り付け、どこか遠くへ行ってしまう。
3号はもうパロマの意識が自分には戻って来ないと悟ると、飛べない翼を使って何とか這い上がろうと努力したが、一ミリも巨体は動かず重いため息を吐いた。
ガラガラガラと追い打ちを掛ける様にどこかで瓦礫が崩れる音がする。何処も彼処も痛々しいうめき声が木霊している。パロマは収拾のつかない現場を戦々恐々と見渡した。
この惨劇を招いた非情な仕掛け人は、立ち上がれる者がいないのを確認すると無表情のままさっさと屋敷に戻って行ってしまった。
ここまで怒り狂った状態で、野放しはまずい。
誰かが許しを乞いに行かなくては。
双子が何を託して姿を消したのか、パロマには分かりたく無くとも重々分かっていた。
(出来る事なら、私も逃げたい。)
空を見上げてそう思った途端、現実逃避していたのを気付かれたかの如くガシッと肩を掴まれた。
パロマの肩がビクッと震え上がる。
「パロマさん、行きましょうか。」
部下1号が本当の意味で包帯を血で濡らして、真っ青な顔に脅す表情で後ろに立っていた。
「え・・・・わ、私1人ですか?・・・えぇ?ちょっみなさん、お顔が怖いですよ・・・?」
パロマの左右には、どこからともなく他の同僚達も現れ、逃げ腰のパロマを囲いに掛った。
焦ったパロマは急いで妥協案を練る。
「それじゃあ、みんなで謝りに行きましょ?ほらその方が、誠意が伝わりますよ、きっと!」
「いえ、私共では無駄に被害が広がるだけです。それは今までで立証済みではありませんか。」
「さぁ、腹を決めて下さい。」
優れた部下達が、ここぞとばかりに見事な連携を見せる。パロマは今にもステージから引きずり降ろされそうだった。床に挟まった部下3号は他の者に助けてもらい、惨めなパロマに「頑張ってくださ〜い」と無責任なエールを送っている。
「エエエリオットさん!エリオットさんがいるじゃありませんか!!彼にもお願いしましょうよ!」
パロマは最後の頼みの綱を繰り出した。
「エリオット様はすでに寝返っていらっしゃいます。」
無情な部下が目配せした先には、「何で俺が後始末しなきゃなんねぇんだよ!おらぁ双子共!!隠れてねぇで出てきやがれ!!!」と叫ぶエリオットがいる。彼はあっさりと敵の手に堕ちていた。
「素直に謝っちまいましょうぜ。それしか無いっすよ。」
「さっさと終わりにしましょう。」
「待って!ディーとダムは?!せめて二人も連れて―――」
「あのお二人が私共に見付かる場所等に身を潜めている筈がないのは、貴方も分かっているでしょう。さぁ、観念しなさい!!」
パロマの悲壮な悲鳴が、屋敷の中に引きずり込まれていった。


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