05
七色のモヒカンのカツラを片手でブラブラ振り回しながら現れたのは、エリオットだった。誰もが知っているこの屋敷のNO.2。ウサギ耳の彼は、空気が読めない事でも有名だった。
怖くて口が開けない黒づくめの彼らとペンギン達は、手を左右に振ったり、小さく客席を指差ししたり、何とか彼にジェスチャーで伝えようとする。パロマに至っては手を胸の前で小さくクロスして『中止!』と口パクで意思を送っていた。
「はあ??キメの合図か?こうやんのかよ?!」
大声を張り上げたエリオットが、パロマを真似て頭上で両手をクロスした。
違う。
ステージの誰もがズルっとしながらも諦めきれずに、何とかエリオットに『これ以上喋るな!』と体を使って伝えようとしたが、
「何だよ、てんでバラッバラじゃねえか。てめえ等全然あってねぇなぁ〜。あんだけ仕事サボって練習して出来栄えはそれか?!フラッドに黙っておいてやったのは、クソつまんねぇライブ聞く為じゃねぇんだぞ。」
とんだ逆効果に終わった。
パロマが変なバッテンマークなんて両手で作ってしまったものだから、エリオットの理解力もとんでもない方向へとひんまがっている。
客席の役なし達はエリオットから目が離せない。むしろ、離したくない。後ろが気になって仕方がないが、振り向けない。振り向いたら最後、彼の人の放つ凍てつくオーラが身体中に刺さって、胸の時計が瞬間冷凍してしまいそうだ。
「大体爪が甘ぇんだよ。全員でひと芝居打った所で、仕事部屋のカーテンが全開だったからな?フラッドにバレたら、てめえ等反逆罪でみ〜んな縛り首だぜ?うたた寝している隙に閉めてきてやったけどよ〜」
大したお役でも無いのに、どうだとばかりに胸を張るお目出度いエリオットは、そんな事の前にリハーサルの音でバレている事を知らない。そして、ブラッドにだって両手というものがあるのだから、そんなちっちゃなカモフラージュなんて通用しないなんて想像すら出来ない。
成す術も無く次々と悪事が上司に暴露されていき、全員の足が恐怖でガクガクと震えた。怖いなんて言ってられない。信用を取り戻す為に全員かすがる思いで後ろに向き直す。
「何だお前ら、化け物でも見たみてぇな面して。はっは〜ん、さては悪魔大王にでも扮した誰かが、俺を驚かせようとしてやがるな。馬鹿かテメェら!俺様に怖い物がある訳がっ・・・うわっ!!」


―――馬鹿はお前だ!


皆の努力も空しく、さらに追い打ちをかけるようなエリオットの馬鹿っぷりにステージの双子がガクッと項垂れた。エリオットが全員の視線の先に目を向けると・・・・そこには悪魔大王がマシンガンを構えて仁王立ちをしていた。
「お望み通り貴様等全員縛り首だ!!!!!」とマシンガンの連射する音が庭中に響き渡る。




突貫工事のライブ会場は灼熱地獄になる筈が、血の池地獄と強制的に軌道修正させられたのだった。






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