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曲の前奏が始まった
なんちゃってライブ会場はテンションマックスにまで上り詰める。
パロマが同僚達に向けて出来る限り怖そうに演出しながら、大声を張り上げた。
「歓喜に震えてのた打ち回れ戯け者共!!恐怖の旋律に酔い痴れろ―!!!」




ドバババババババアアアァァ―――ンン・・・
  




彼女の叫びを合図に激しい音の共演が始まった


・・・・かと思いきや、


スピーカーの音をすべて呑み込む、そしてその場にいる全員が厭でも聞き慣れた『銃声』が、裏庭中に反響した。
パロマの真後ろにあるライブステージの黒々しいシーツが銃声と共に次々と大穴が開き、一瞬にして見るも無残な端ぎれと変わる。
会場内はシンと静まり返った。
舞台上の4人は一切の動きを止め、客席の最も後方の一点を固唾を飲んで見詰める。




「―――『灼熱地獄』・・・」




客席の誰も彼もが、恐る恐る後ろを振り返る。
ライブ会場の一番後ろには煙を吐き出すマシンガンを構えたブラッドが、シーツに書かれてあった文字を淡々と読み上げた。
一瞬でその場が凍りつく。
熱帯地方の様にムンムンとしていた空気は、一気に氷河期まで遡っていた。
「ほぉ〜?このクソ忙しい時期に何をしているのかと思えば、揃いも揃って集団自殺か。そんなに苦しみたかったとは知らなかった。私が自ら1人ずつ地獄に突き落としてやろうではないか。」
重い空気に、ガシャンとブラッドがマシンガンを構えなおす音だけが響き渡る。
「―――ほら、歓喜に震えてのた打ち回れ。」
パロマの台詞をそっくりそのまま、脅迫まがいに告げてきた。パロマのそれとは怖さが違い過ぎる。
辺り一面静寂に包まれた。
一番ガクガクブルブルと震えているのは、パロマである事は言うまでも無い。舞台袖から次の出番待ちをしていた部下2号から4号が、可愛いペンギンの着ぐるみに包まれて「何だ何だ?」と顔を出した。彼らも只ならぬ妖気に包まれた上司を見付けて、すぐさまザ―と青ざめた。
緊張の走る会場に、その場にそぐわない軽快な靴音が響きだした。花壇を土足で横断してきた彼は、直線距離でステージに近付いてきた。
「おーいパロマ。こんなもんしかなかったが、これで良かったか?―――って、お前らどうした。」


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bkm


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