03
庭が一面熱気に包まれている。
彼ら全員が同じ方向を見て歓声を上げていた。
そこは漆黒に染められた舞台が設置してあり、銀色に光輝くドラムが一台あるだけで人影はない。
姿こそ無いが、何かが始まる音がする。
重低音のベースの音が観客を刺激し、次いで鳴り響き出したギターの旋律に、会場の士気は否応がなしに高まった。
いつもの洗濯のポールに一際大きい黒く染められたシーツが干されて、風に靡くそこには血が滴るが如く真っ赤な文字が記されていた。




『 BLAZING INFERNO ROCK FES.  In the world of a clover 』




いつの間にかドラムの位置に着いた全身黒づくめの部下1号が、激しくドラムを叩き鳴らした。すべての視線がドラムに集まる中、一斉に3つの音が止んだ。観客が固唾を飲んで見守る。気障ったらしくギターの痺れるソロが響き渡った。
すると、バンという盛大な爆発音と共に、真っ赤な薔薇の花びらが空中にバラまかれ、ステージに3人の若者が突如地面から打ち上げられた花火の如く出現した。
ギターを掻き鳴らすディー、ベースを掲げたダム、そして何故かマイクを持ったパロマだった。
全身黒づくめの彼らは、よく見ると黒い衣装は派手に破れて血がにじみ、真っ赤に塗られた包帯を巻いている。ディーは右腕、ダムは左足、パロマは首から巻いて巻き終わりを長く垂れ流していた。頬にはそれぞれ古代文字仕立てで血文字が描かれている。順に『K』『I』『L』最後にドラムの1号が『L』で、繋げると危険な綴りが出来上がる。
観客達は熱に浮かされ、ボルテージが一気に高まった。
スタンドにマイクを挿したパロマは似合いもしない不敵な笑みを浮かべる。マイクにそっと寄り添わせた指は爪まで赤々と染められていた。
「テメェら、わかってんだろぉなぁ〜。ここに来たからには、もう生きては帰さねぇぜ?」
パロマらしくもない台詞に、会場は「おぉ〜!!」と大盛り上がりだ。



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