02
部下への指示を2、3書き綴ってから、ブラッドはふと手を止めた。
(それにしても・・・)




―――何て愉快な夢を見たのだろう。




パロマの背中に天使の羽が生えていた。
何も知らずに騙されている間抜けな姿は、今この世界に迷い込んでいる元いた世界に帰らなくてはという気持ちをすっかり忘れてしまった単純な女と瓜二つだった。しかも触ると徐々に黒く染まっていく面白さ―――
(あのまま心行くまで穢しまくって、余す処なく真っ黒に染めてやりたかったものを・・・)


ギィィィィ―――・・・・ンッ


またもや外から耳障りな騒音が屋敷の中まで振動してきた。デスクに乗ったティーカップが音に合わせてガチャガチャと不愉快に揺れる。
夢から目覚めさせた元凶を確かめようと、こめかみに青筋を立ててブラッドは窓に近付いた。
窓から覗く裏庭には、どういう訳か、
仕事中の筈の無数の配下の者達が、まるで巣穴に群がるミツバチの様に押し合いへし合い所狭しと寄り集まっていた。




澄みきった青空の下、帽子屋屋敷の裏庭は異様な盛り上がりを見せていた。
いつもは規律を保っている多くの役なし達が、箍が外れた様に興奮し腕を上げて何かを待っている。我慢しきれず叫ぶ警備兵もいれば、歓喜の声を上げて飛び跳ねるメイド達もいた。


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bkm


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