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ギュィィィィィ〜ン!!!!ドッドッドッド・・・・




庭から聞こえる耳を劈く程の大音量に、ブラッドは強制的に夢の中から現実に戻された。
どうやら目の前にうず高く積まれた抹消リストに嫌気が差して、いつの間にかうたた寝をしてしまっていたらしい。
長めの前髪を煙たげに掻き上げると、切れ長のターコイズの瞳が宙をぼんやりと見詰めていた。その整った顔立ちは、目にした女性を瞬時に虜にしてやまない物。まだしっかり覚醒していない彼はけぶる眼差をして、誰もいない仕事部屋で無駄に色気をバラまいていた。


ここは帽子屋屋敷領土内、帽子屋ファミリーの本拠地。


泣く子も黙るマフィアの総本山、ブラッドはさらにその頂点に君臨する人物だ。
退屈を嫌う彼だが、仕事熱心と言う訳でもない。机の上の目触りな山をウサギ用の机にさっさと移動させると、一仕事が終わって軽く肩をほぐした。チラッと部下の机を見ると、動かした書類の他にも小山が何個も積み重なり、机と言うよりゴミ溜めと化していた。
ブラッドは良い気味だと内心ほくそ笑む。
「しかし、この厄介な時期はすべてを壊滅に追い込みたくなる程虫唾が走る・・・。」
彼は武器庫の在庫記録に目を通す。
弾数、爆薬どれを取っても右肩下がりの数値だ。すぐになくなるという数字でも無いが、この所の消費率が著しい。それは領土内の治安の悪さと比例していた。
ここはクローバーの国。帽子屋屋敷とハートの城が引っ越し対象となってしまったのだ。突如発生するこの地殻変動は、強大な勢力同士で均衡を保っていた世界を一から作り直すが如く、否応がなしに無秩序な混沌へと誘ってしまう。
領土の境界線がくすんで、どこもかしこも不安定になる。それに乗じて今までは鳴りを潜めていた輩が、ここぞとばかりに騒ぎ出す。引っ越しを役持ちの代替わりと勘違いしているのか、煩い小物が自分こそ次代のルーキーだと馬鹿みたいに騒ぎ出す煩わしい時期だ。その為、帽子屋屋敷でもやっかいな仕事ばかり降って湧いてくる。一つ一つは踏み潰す事等造作も無い事だが、何処からともなく涌き出るウジ虫は貪汚なまでに切りがない。どこか一か所に集まっていてくれたら殺虫剤で一網打尽にしてくれるものを、とブラッドは本気で考えていた。


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bkm


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