28
「青い目をした小鳥は、初めの内は慣れない屋敷で飼われる事に警戒心を向き出しで怯えていたが、慣れてくると図々しくも自己主張するようになって、非力なくせにパタパタ飛んでいる姿が愛らしいと屋敷の皆で可愛がっていたのだが、」
どう考えてもパロマの事を言っている。
ナイトメアの咥内が一瞬にしてカラカラに乾いてしまった。
彼女の事に関してはあれやこれやと身に覚えがあり過ぎて、ナイトメアには誤魔化しようがない。
(なななな何だッ何が言いたいのだっ!あいつをこの世界に迷い込ませた責か?!双子に入れ知恵していたのがとうとう明るみに出たか!・・・屋敷を逃げ出したのはあいつが勝手に仕出かしたのだし・・・お、落ち付け〜。一つ一つ対処していこう。私は正真正銘これっぽっちも罪は無い!!)
こう言われたらああ言おうと勝手に脳内でシュミレーションする。自分が直接帽子屋屋敷に被害を与えた訳では無い。故にこの男から不平不満をぶつけられる謂れも無い。ユリウスやアリスは仕方が無いが、この男にはパロマと自分の接点がどの位だったかだなんて知りえる筈が無いと、ナイトメアは高を括っていた。
だが、そんな甘い人間ではない、と言う事をナイトメアは失念している。
真っ青になって視線が定まらなくなったナイトメアに、ブラッドはことさらゆっくりと先を話し出す。
「ところがだ。その小鳥が急に飛んで逃げてしまった。」
どうやらブラッドの話はパロマの失踪事件にまで発展していた。ナイトメアはいちいち話の行く末にビクビクと怯える。一人照明に照らされて、一挙一動すべてが相手に丸わかりだというのに、雰囲気に呑まれ、それさえも念頭から遠く置き去りになっている。そして最後の仕上げとばかりにブラッドは煙草の光をジュッと消し去った。
「私の元で悪戯を仕出かせばどうなるか、分かっていない訳でも無かっただろうに。小さい頭で何を思い付いたのか。最も警備が手薄になる時間帯を選んで、逃亡を計った。部下の話だと、小癪な事に飛び立つ前に何かを羽織って姿を隠していたらしい。気配を察して空を握ると突如姿を露わしたそうだ。―――お前なら、どういう事だと思う?」


―――透明マントがバレている―――!!!


ナイトメアの胸の時計がピタリと時を止めた。
それ程の衝撃が、ナイトメアの身体中を駆け巡った。
「そんな事は事実無根だ!あいつが勝手に逃走劇を繰り広げたのだ!!まさかあの場で使うと誰が想像出来るッ」


prev next

250(348)

bkm


top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -