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何が始まると言うのか。
夢魔に対して、こうも度肝を抜かす夢はこの前見たアリスの夢と類似している、がしかし似ていると言うだけの全く非なる物。おどろおどろしさがケタ違いだ。

「二度言わなければ、分からないか?」
次はもしかしたら言葉ではなく、別の何かが撃ち込まれるという恐れが頭に過った。
すぐさまセカセカと椅子を直してそこに座る真の小心者ナイトメア。ナイトメアが椅子に座るとブラッドも席に着いたのか、真っ暗で姿形が見えなかったのが薄ぼんやりと形を捉える。
(な・・・何だと、言うのだ。こいつは夢に等興味が無かった筈だが。まさか本気で気晴らし・・・な訳がない。何か思惑があってやってきたのだ、確実に!)
悠然と足を組み、ソファの肘かけに肘をついてリラックスしたブラッドの姿は、パイプ椅子で縮こまっているナイトメアとは雲泥の差だ。暗さのせいで、ナイトメアからは向かいの男の表情までは全く見てとれない。
「す、座ってやったぞ。これで文句は無いな。」
相手側の返答が無いので、ここは威厳の取り戻し所と、ナイトメアが襟を正して鼻息荒く顔を上向きにする。
「大体お前の夢のダークさは何なのだ。もっと明りを付けろ、明りを。その人を脅しにかかる気配をどうにか出来ないのか。もっとこう夢なのだから気楽にだなぁ」
「私の一方通行でなければ、お前とは親密な仲じゃないか。こんな暗がりで二人語り合う程にはな。」
ブラッドはまるで睦み合う恋人同士の様に比喩しているが、もちろん二人は親密な間柄からは程遠い。暗がりで1人スポットライトを当てられたナイトメアは、さながら拷問待ちの囚人だ。
(何時っ何処でっっお前と親睦を深めた!だが、そう思うのならこの状況を何とかしろ!!)
夢を自由自在に操るナイトメアだが、目の前に居座る男の不気味さにその能力を駆使できずにいる。口から出かかった言葉も、ゴクッと唾と一緒に呑みこんだ。向かいから衣擦れの音か聞こえる。どうやら体勢を変えた様だ。
「それでは、気を許したお前にはひとつ、最近起きた何とも不可思議な出来事を話して聞かせようじゃないか。」
(さり気なくを装って、本題が来た!!!)
淡く光る煙草から何とも言えない豊潤な香りが漆黒の空間に充満する。ナイトメアはジリジリと照り付ける照明の熱で、額に汗が滲んできた。
「特に問題も無く、平穏そのものだった我が領土に、突如、一羽の小鳥が迷い込んできた。」
昔話調で始まった話に、ガチンッ!とナイトメアが固まる。何の話が始まったのか、何となく分かってしまった。


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bkm


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