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そこでギクッと身を強張らせた。
本当は笑い声で、雰囲気で、分かってはいたが、一縷の望みは捨てたくは無いではないか。しかし、
「やっとお出ましか、夢魔。」


(マズイ所にキタ――――――!!!!!)


ブラッドがいる。
怪物が見る夢なんか目じゃない位、来たくも無かった夢に訪れてしまっていた。
「お前に会いたいが為に、いつもより早くベッドに潜り込んでしまった。我ながら幼子の様だな。」
この如何にも裏がありますと言いたげな言い回し、間違いない。
ナイトメアに『会いたかった』等と意図する所が全く見えない怪奇っぷりを醸し出しながら、優雅に煙草をふかしている。
「ちっ近頃のお前は、夢なんぞ見なかったではないか。どういう風の吹き回しだ。お、おおっそうか!とうとうお前も偉大な私に助言を求めにやってきたのか!!」
「単なる気晴らしだ。しかし・・・フッ、夢を司る者が、夢裡の暗闇を怖がるとは。思わぬ余興を楽しめた。たまには夢も見てみるものだな。」
いつも威厳たっぷりを自演しているナイトメアの心底怖がる情けない姿が余程可笑しかったのか、ブラッドはまだ笑いを止められない。
ナイトメアはそれに対して、プライドを傷つけられたと怒り心頭になる何処ろか、
(おいおいおいおいっ魔王に対して、小童呼ばわりしてしまったぞ・・・っ)
臆病風に吹かれていた。
役持ちのランクがあるのだとしたら対等、否自分の方が上だとナイトメアは自負している。しかし、この男に勝った気がしないのは何故なのだろう。
(き、聞こえなかったのか?いいや、地獄耳のこいつだけは油断出来ぬ。追求されてもお前だと分からなかったとシラを切り通すか。いやいや!見えなかったのは事実ではないか!何で私がシラを切らねばならんっ!!)
ナイトメアは夢の主がブラッドと分かった途端に及び腰になっている時点で、負け確定なのが分かっていない。もう言い訳の準備に勤しむ彼は、捕まえた獲物がアタフタする様を相手が含み笑いで眺めている現状を知らない。
しかしナイトメアからしたら、片や闇と紫煙に包まれた怪しげな人物、片や己は罪人の如くギラギラとスポットライトを当てられている。
これでビクビクしない方が可笑しい。
今にも逃げ出さんばかりのナイトメアに、ブラッドは無造作に椅子を投げ付ける。暗闇からいきなりパイプ椅子が現れ、ガランガランとナイトメアの足元で痛い音を立てたので、彼は片足を上げてビクついた。
「まずはそこに座れ。」


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bkm


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