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対面しているナイトメアを直視するユリウスの瞳は、真剣さを孕んで何処までも澄んだ色をしていた。確かに、気易く冗談を口にする男ではないがと、ナイトメアはゴクッと音に出して唾を飲み込んだ。
「冗談で済ます所だぞ、時計屋!中立のお前が真っ向から帽子屋に戦争を仕掛けてみろ。危うい均等を保ってきたこの世界は、物の見事にすべて崩壊だ!!お前だってその位の結末、想像が付くだろうが!女一人の為にそこまでやってのけると言うのかお前は!!!」
「それのどこが悪い?忌々しい帽子屋がすべての諸悪の根源だろうが。元々存在自体が許せぬ人物だったんだ。あいつは正々堂々勝負を挑んで来たかと思いきや、盗人宜しくパロマを奪い去って行った。これで怒らずしていられるか!!!」
冷静沈着を常とするユリウスが、ブラッドへの嫌悪感にパロマが絡んで正確な判断力を失っている。この荒れ狂う感情のまま放置すると、夢物語ではなく、実際に有言実行しそうだ。
こんな所で、いらないパロマの余所者効力が発動。
ナイトメアの眉がピクピクと動いた。
(あ〜い〜つ〜め〜!!!なんて面倒な置き土産を残してくれたのだ!単細胞のバカのせいで、私の『快適夢生活』が『誰の夢だか恐怖のルーレット』と化してしまうではないか!今度会ったら百叩きの刑だ!!)
パロマに復讐を誓いつつも、何とかこの場を収めようと言葉を必死で選ぶ。
パロマが本当は奴隷のままでボロ雑巾の様にこき使われている事、ユリウスの所へ謝りに行きたがっているのに、借金の枷で雁字搦めになっている事等バカ正直に打ち明けたら、この世は目の前の男によって破滅を辿る。
「と、兎に角落ち着くのだ。ここは穏便に事を済まそうではないか。」
「穏便に出来なかったのは貴様だろうが!!!!」
怒れる稲妻第二弾がナイトメアを貫通した。プスプスと煙を立ち上らせたナイトメアはすぐさま立ち上がり敬礼の姿勢を取った。
「わっ分かった!ここは私が表立って、万全を期して、穏便に、事を、運ぼうではないか!」
そう言いながらも、頭の中では舌をべーっと出して『お前の夢になんか二度と来るか!』と毒づく。しかし、何故かユリウスにはナイトメアの口には出していない負け犬の遠吠えも聞こえたようで、
「次も必ずここで待っているからな。その時もふざけた回答しか出て来なかったら・・・その時は容赦しないぞ。」
ユリウスは氷の刃の様な冷たく鋭い視線でナイトメアを睨んだ。
「はいぃ!」
ナイトメアは震え上がって頭の中でも敬礼した。





彼の連敗記録はまたもや更新されたのだった。





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