01
「ふぅっ。今日もしっかり干せたわ!!」
パロマはニッコリ笑って、洗濯物達を見渡した。
青い空に、白いシーツが良く映える。
パロマはあの後、すぐさま女性の仕事仲間を探し出し、ひた向きに仕事について教えてもらい、何とかあくせくとやっていた。
ここでの暮らしも、やっと慣れてきた所だ。
自分で見て動き、人と接していろいろ分かってきた事実、


ここは、パロマがいた世界では、ない。


街や都市や国のレベルではない、全くの別世界なのだ。
信じられない事だが、そうとしか言いようが無い。
どこか異国の情緒だったのは、異国より遥か遠く、『異次元』に飛ばされてしまったからだった。
ナイトメアは、夢の中でこの事を言っていたのだろう。
この大きなお屋敷は『帽子屋屋敷』と言うらしい。
この界隈を統治するトップの組織で、大勢の部下を持つブラッドは、その頂点に君臨する。
エリオットは次席で、主に組織を統括する仕事をしている。
しかし、その組織と言うのがどうにも胡散臭い。
全員が拳銃を携帯し、牢屋まで完備されている辺りから、表の社会ではない気がするパロマだった。
しかし同僚の話だと、この屋敷だけではなく、武器を装備していない者などどこにもいないと言うのだ。まるで何も持たないパロマの方が、異端者扱いだった。
とは言ってもパロマの近況は、このお屋敷内でしかなく、自分に至っては平穏にまた激務に追われ、刻々と過している。
あの新人いびり事件後は嫌なちょっかいもされず、襲ってきた彼らだけは何故かパロマに最敬礼で対応してくる、という変な関係で落ち着いていた。
何より、ご飯や寝床が牢屋の頃より、格段に良くなっている。
パンはカビてはいないし、スープも具入りで温かい。シーツは自分で洗っているので、眠る時は洗いたてでフカフカだ。しかもポプリで好みの香り付けも自由に出来る。


しかし、仕事が半端無くキツすぎた。


「いったたたぁ〜・・腰が痛い・・・。ボス達は、私にどれだけ眠った力があると思っているのよ。仕事の量が尋常じゃない。・・・はぁ〜、私はいつ元の世界へ帰れるの・・・。」
パロマは痛みに悲鳴を上げる腰を支えつつ、ぼぅっと空を眺める。
この世界に迷い込んでから・・・どの位の時間が過ぎているのか。
学校は皆勤で休んだ事が無かったので、何日か欠席しても大丈夫だが、それだって限界がある。
卒業するかしないかで、将来の優遇だって違ってくる。
学校主催のオペラ公演で、有難い事に何度かプリマドンナを演じさせてもらって、評価を得てはいるが、まだまだ実績が足りない。
こんな所で洗濯物に埋もれていて良い筈も無いが、帰るすべも全く無い。
そして借金返済の目途も無い。




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bkm


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