06
うおおおおおーと急に歓声が上がった。
路上の中央に佇むナイトメア。
右、左と頭を振ると、道沿いは人で埋め尽くされている。
どうやら何処かの街並みの一角という設定の様だ。レンガ屋根の店が軒並み連なっている。
ハートのエンブレムが所々に散りばめてあるので、ハートの城の領土か。良く見るとナイトメアに向けて声援を送っている人物達は、全員ハートの城の兵士達だ。
「何だ?ここは誰の夢だ。」
バァァァン!!
何かと何かがぶつかる音がして、キョトキョトと動かしていた目をビクッと前方に向けると、
「ちょっと、ナイトメア?私の夢は随分久し振りなんじゃな〜い〜?」
そこにいたのはアリスだった。
ナイトメアから10歩程離れた距離か。会話をするには少し遠い。しかしこの騒ぎの中でも声が通る距離。遠過ぎず、近過ぎないこの間隔は
(間合い・・・か?)
ナイトメアがそう思ってしまうのも無理は無い。
またバシィィンと軽快な音が響いて、兵士達の興奮をさらに煽っていた。
アリスの両手には真っ赤なグローブが嵌っている。
通常装備のエプロンドレスが、動き易く改造されていて、さらに防具が備わっている。
「何であんたがここにいるのか、理由は充分分かっているわよね?」
ナイトメア額にタラリと汗がつたう。
完全武装したアリスが道の中央に立っていた。
ちょっと大きめなグローブがアリスとミスマッチで可愛い・・・なんて思っている余裕はナイトメアには無い。
「い、いや〜?何の事だかさっっぱり??」
「しらばっくれないで!パロマの事に決まっているでしょ!!」
アリスがグローブごとナイトメアを指差した。
挑戦状を叩き付ける様な態度を取っただけで、観客は対岸の火事の如く大盛り上がりだ。この兵士達は一緒の時間に寝こけているアリスのファンだろうか。時の人でもある余所者が大人気なのが、こんな所で裏目に出る。敬われるべき役持ちなのに、顔なし達からのブーイングの嵐に見舞われるナイトメア。一人一人顔を覚えて後で仕返しをしてやろうと特徴の無い顔を端からねめつけていると、目の前に来て自分よりも輪を掛けて怖〜い顔をして睨んでいる女の瞳と視線がぶつかって、思わずたじろいでしまった。
「何で、あの子が、この世界に迷い込んでいるのよ。穴は塞いだって言ってたじゃない。嘘吐いたって訳?!」
お世話になっている領主と共に居る時が長いせいか、怒った凄さがあの我儘女王に似て来た。だがしかし、あの女程利己的で、傲慢にはなり切れていないアリスだったら懐柔する余地がある。ナイトメアはスッと背筋を伸ばして、立場の違いを誇張した。


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bkm


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