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(あいつがパロマの事でうっかりなんて事は、まず無いに等しい。感づいているのを知っていてワザとやっているのだ。可愛いわけあるか!!すべてが計算づくの行動だ!)
飴と鞭は使いよう。
しかしパロマの場合、すさまじい鞭の合間の砂糖一粒。パロマにとってはどんな豪華なデザートより、その流砂の一粒が何よりも甘露に感じる事だろう。
「アリスの事はどうした。一緒にいたいのではなかったのか?」
それを聞いて、途端にパロマの表情が曇る。
「そうしたいって手紙を書いて送ったのですが、アリスの手紙にはダメだって書いてありました・・・。それもそうですよね。彼女がお世話になっているハートのお城で、問題を起こし過ぎちゃいましたしね。私が行く事は出来ませんが、アリスの方からちょくちょく遊びに来てくれるって約束してくれました。」
ナイトメアの見えている片目が、まん丸に見開かれる。
(あいつめっ!アリスにまで手を回していたのか!!なんて抜け目の無い・・・。)
一瞬怯んだナイトメアだったが、気を取り直して違う質問をする。
「時計屋が君の事を怒っていたぞ。感謝の一つも言いに来ないと。」
「行きたいのは山々なんですが、しゃ、借金がっ。借金が私の肩に重く圧し掛かって、動こうにも動けません。領土を出たら倍に増やすと脅されていて。一度踏み倒しちゃったので、そこの信用も失っちゃったみたいで。もうこれ以上増やしたくないんですぅ・・・。」
私だって出来たら謝りに行きたいんですけれど方法が、とパロマは頭を抱えてテーブルにうっ潰した。
借金借金と言うが借用書の取り交わしも無く、どう金額を把握するつもりなのか。このまま行けばなし崩しに働かせられ、屋敷領内から一歩も外に出られない事は一目瞭然だ。しかし闇の組織に面識がないパロマはそんな事にも恐ろしく疎い。
「あ、でも、ボスが代わりに礼状を認めてくれたので。ユリウスさんにもお詫びの気持ちは伝わっているかと。いつか、ちゃんと謝りに行けたら良いですね。」
そのバカげた言葉に、ナイトメアは口に含んだ茶を吹き出しそうになった。
(だっ・・・誰の話だっっ!!レイ?!礼状と言ったか???)
帽子屋と最も縁遠い部類の言葉をひと繋ぎにして語られ、ナイトメアは意味を理解するのに時間がかかった。騙されるにしても、限度があるだろう。あの男がそんな礼儀正しい行為に時間を割く訳が無い。しかも天敵とも言える時計屋相手に。ナイトメアには想像もつかない事を、この女は信じて鵜呑みにしているのか。
ナイトメアは最早、何も言えなくなっていた。





―――完っっ璧に操られている・・・





自分の両手足から伸びたピアノ線が・・・この女には何故見えない!!!―――




ナイトメアは呆然としたまま目の前にいる只のお馬鹿さんを凝視した。


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bkm


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