08
パロマは夢の中でとある人物を追いかけ回していた。
「待ちなさぁぁぁぁぁい!!今度という今度はずぇっっったいに許しません!!」
「こ、こらっ落ち着けっパロマ!私は体力もないのだ!!」
「それなら走らなければ良いでしょ!身に覚えがあり過ぎて、逃げるしか出来ないくせに!!」
いつもの低い丸テーブル。急須に湯呑。茶菓子用の煎餅。
この前見た不思議な夢とは違い、良く見る夢の風景だ。
そこでパロマとナイトメアがテーブルを挟んで、二人してグルグルと走り回っている。
グルグルグルグル。
もう少しで、とろけたバターになりそうだ。
勿論逃げているのはナイトメア、それを追いかけるはパロア。
しかし足の早さには自信があるパロマは、ナイトメアの上着の端をパシッと捕まえた。ニヤリとしたパロマだったが、すぐさま「まずいっ!」と青ざめる。


ドベチャッ!


ナイトメアが両腕を上げて豪快にすっ転んだ。人の事は言えないパロマだが、彼も身体能力が余り備わっていないのか、受け身も取らずにビッタ―ンと顔から潰れる。
パロマは嫌な予感に苛まれながらも恐る恐る前に回り込み、彼の容体を確かめに行くと、
案の定。
ムクッと起き上ったナイトメアは大量の鼻血を惜しげも無く噴き出し、出血多量で白目を向いてそのままクタッと気絶した。


「早くお医者さんの夢に行って下さい!」
パロマが切実に訴える。
大量鼻血噴射後ナイトメアは気絶しただけに留まらず、起きたら起きたで貧血で目が回って気持ち悪かったのが、最悪な事に吐血までした。そして真っ赤に染まった己の手を見てまた気絶した。正に血みどろの悪循環だ。
「医者は嫌いだ。正論振ってさも自慢げに捲し立ててくるが、所詮人の受け売り。信憑性等あったものか。それに付け加えてあんの腹黒い作り笑い。あいつ等の『痛くありませんよ〜』は『私は嘘吐きで〜す』と同意語だ。最も信用ならん。痛いし。」
ナイトメアが落ち着いたので一時休戦と、急須から湯呑にお茶を注いでいたパロマは、彼の持論を聞いて思わず手を止めた。
「そうは言っても、医師が深刻そうな顔をしている方が怖いじゃないですか。具合が悪い時は我慢も必要です。」
「い・や・だ。『我慢』は私の理想とする『究極にして贅沢ライフ』字引には載ってはいない。何としてでも回避する。」
ナイトメアは梃子でも主張は変えない気らしい。数刻前に足元を血の海にしたばかりなのに、元気になったら何事も無かったかの如く、湯呑を持って美味しそうに茶を啜る。


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bkm


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