07
何が始まったのか。数分前にはひれ伏すのみだったパロマが大口を叩いている。眉を潜めて見ていると、パロマはブラッドに背を向けたままネズミ達を解放した。
「そして、無意識かもしれませんが、貴方だって・・・。いいでしょう。私は一向に構いません。またここから、始めましょうか。」
振り返ったパロマは不敵な笑みをブラッドに送った。


「―――ねぇ、ブラッド?」


そう、パロマは気付いていたのだ。
あのハートの城での恐怖の惨劇の最中。
前後左右敵だらけ、助けてくれようとしたアリスはペーターによって押し止められて身動きが取れなかった。逃げ出そうにも出入り口付近には城の4人が居座り、しかしその前にパロマを拘束したボリスから逃れる事が出来なかった。そして何より、アリスの発言のショックが大き過ぎて逃げる気も失せていた。
(首を絞められて、もう駄目かと思った時・・・)
まさかの助けが来た。
彼等の追手を怖がって逃げていた筈なのに、あの時は姿を見ただけで泣きたくなった。
しかし、驚いたのはそれだけではなかった。
審判の間に入ったブラッドは渦中のパロマに対して、
初めて、『パロマ』と名前で呼んだ。
(いっつも『おいそこの奴隷〜』って、見下した呼び方ばっかりだったのに。あの時やっと私個人をボスに認めてもらえたって思えた。―――これでもう私達、対等よね?)
ブラッドは目を見開いて自信に満ち溢れた1人の女を見た。
パロマの告げた言葉の意味はすぐに察したが、しかし、誰もがひれ伏す自分に対して、しかも拘束具を付けられて逃げ場さえ無いのに、それだけの理由でこうも胸を張れるのだろうか。
しかしブラッドは奴隷に呼び捨てにされても、苛立つ処かそれが逆に愉快に感じた。
何の障害があろうとも、足が踏みしめる地は並行。どこまでだって距離を縮められる。
離れなくて良いのか、牢獄はある意味囲まれた安全圏だ。
近づくのは、どっちの方か―――

腕を組んだブラッドが、チラリと南京錠の鍵を見せびらかした。それを使えば、パロマは自由を手に出来るのか、それとも・・・・
パロマとブラッドの視線が重なる。鍵を見てキッと眼差しを鋭くするパロマに対して、ブラッドが本性剥き出しの残忍な笑みを返した。




「お手並み拝見と行こうじゃないか。―――パロマ。」








★Special Thanks for Reading !!




ハートの国編、本編はここまでとなります。
長い間お読み頂き、本当にありがとうございました(;−;)
これから『おまけ』に入ります。もうちょっとお付き合い下さい☆






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bkm


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