05
「お前、何か勘違いをしているだろう。」
ブラッドの眼光がパロマをビクッと震え上がらせる。
「話を聞かせろとは言ったが、許してやるとは言っていない。」
パロマはその言葉に少し怯んで、野獣からちょっと怒った人間に萎んだ。
「無断欠勤、職務放棄。借金を踏み倒してさらには逃亡。そこまでしても諸手を挙げて迎え入れてもらえると、可笑しい位能天気なお前でもまさか思ってはいないよな?」
(思っていましたとも。)
とズバリ能天気なパロマは、頭の中でそのまんまな返事をした。とっても寒い檻の中で、嫌な汗がタラリと頬を伝う。
言い分はすべて自分本位な事柄ばかり。立つ瀬が無い所は棚上げして、逆上していた自分が確かにいる。ブラッドはそんな勢い任せなパロマに流されてなんかくれない。
「しかも、女王の至宝を台無しにしたんだって?部下思いの私は虫けら以下のお前の為でも代わりに弁償しておいてやったぞ。あれは思いの他高くついた。お前の借金に全額上乗せしておいたからな。」
パロマの冷汗はまるで全力疾走した後の様にブワッと急激に溢れだした。
一番痛い所を突かれてしまった。
城の一部が崩壊したのはみんなでやった事として、パロマだけが叱責されはしないだろうが、ビバルディのあの貴重な茶葉を駄目にしたのは100%パロマのせいだ。他の誰でもない。完璧にパロマが悪い。
しかし、あの兵士の口ぶりからして、貴重な茶葉とやらの代金はいくらに値するのだろう。
(何処のお店に行っても売っていなさそうな感じがしてた〜。あの陶器って結構重くなかった?りょ、量的にはどの位入っていたのかしら・・・。)
もちろんパロマは、その後に数十倍もの価値がある茶葉を、ブラットが軽〜くビバルディに差し出した事を知らない。借金額の上乗せは、言うまでも無く後者の損害額だ。一文無しでこの世界に迷い込んだパロマ。マイナスの金額だけが、やたらめったら膨れ上がる。
「うっ・・・・」
ちょっと怒った人間から810番の縮こまった囚人に自ずと変わる。するとすぐさま頭を牢屋の地に付けブラッドにひれ伏した。
「も、申し訳ありませんでした!借金全額返済に向けて精進したいと思います!!」
「当たり前だ。」
ブラッドの即答に、パロマはぐうの音も出ない。弁解も出来ずに只管頭を地面に擦り付ける。


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bkm


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