04
やっと元通りになって立ち上がると、改めて自分とブラッドの居場所を交互に見やる。
あまりのギャップにギリギリと歯ぎしりをする。
「私は檻の中で・・・・貴方は、何ですか?こんな辺鄙な所でティータイムでしょうか。」
ブラッドが殺風景な牢獄に用意周到にもテーブルと椅子を準備させていて、パロマの手の届かぬ場所でシレっと紅茶を嗜んでいる。あまり甘い物には手を伸ばさないブラッドだが、紅茶の時間にはティーセットと一緒にデザート類も必ず用意される。ハートの城で垣間見た料理達もずば抜けて美味しそうだったが、帽子屋屋敷のコックの腕前だって引けを取らない。もし彼等が屋敷から離れて、人気の無い道端に小さな店を構えようとも、そこが何処であっても客による長蛇の列が出来る事請け合いだ。
途端にパロマの腹の虫がグゥ〜っと鳴った。赤くなって両腕で音の出所を隠したが、もちろんブラッドにも聞こえていただろう。口角がニヤリと上がっている。
「何だ、腹が一杯ではなかったのか。目の前にあった料理に手を付けた形跡が無かったのは、てっきりそうかと誤解をしていた。」
本当に誤解していたのだろうか。それなら何故ニヤニヤにやけているのだろうか。
こんな事なら、すぐさま口に入れておけば良かった。無駄に哀愁を漂わせている場合では無かった。
(だって、誰が想像出来るって言うの?!ちょっと油断して寝ちゃったら、一切合切無くなって、今度は牢獄に収容だなんて!!)
自分は背中とお腹がくっ付きそうなのに、全く小皿に手を伸ばさないブラッド。必然的に涙腺が緩んで、瞳がウルウルと潤んでくる。それに同情したのか、ブラッドが殊更優しい声を発した。
「心配するな。ここに入ったからには、シェフ達が腕によりをかけてパンとスープの準備をしているだろう。今頃パンは暗室で寝かせてあるんじゃないか?良い感じで干からびて、緑づいているかもしれないぞ。」
「そんな事なら、目の前のスコーンで良いじゃないですかあ!!何で態々またカビ付きのパンと具無しのスープで、いつ訪れるか分からない腹痛の恐怖に怯えなきゃならないんです!!!!」
パロマの怒り、ついに暴走。
「だからっどうして何で牢屋なんですか!!一歩譲ってお屋敷に知らぬ間に帰ってきたのは許せるとしても、いえ、やっぱりそこだって許せません!!!」
野生動物ばりに鉄格子を揺らすパロマ。ブラッドは茶と嗜みながらシレっと眺めていた。
「ああっ!アリスにさよならも言っていません!!ユリウスさんにもお礼がしたかったのに!!こんな重しがあったんじゃ動けないじゃないですか!!!その前に檻から出して下さい!!!横暴ですっこんなの!」
怒り過ぎて、何から言い出せば良いのか分からなくなっている。思いつく限りを口から吐き出した。
獰猛な犬の如く唸るパロマに、ブラッドの目がキランと光った。


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