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様変わりした謁見の場では、華やかな衣装に身を包んだ紳士淑女が肩を寄せ合い談笑している。赤に青に黄色に緑、極彩色で着飾った彼らは、ホールに咲いた煌びやかなダリアの様だ。そこの正面に一際美しい薔薇が一輪咲き誇る。
言わずともしれたこのハートの城の女王、ビバルディだった。
そこにいる誰もが彼女にひれ伏す。妖艶な笑みを浮かべて、ビバルディは舞踏会の開催を高らかに宣言した。
夕焼けだった外の景色がみるみる内に漆黒の夜に変わり、豪華絢爛なシャンデリアが光りを散りばめながら存在を主張し始めた。貴婦人のドレスや髪飾りに付いた宝石がその光に反射し、舞踏会は一層輝きだした。
ブラッドは1人、一段高い場所から開会を見届けた。
双子達は女王のスピーチが終わると同時に、ディナーが並んだテーブルへと真っ先に駆けて行った。エリオットは多くの部下達に囲まれ、賑やかに雑談している。舞踏会会場に女王の姿が見えなくなったのを確認してから、ブラッドはゆっくりとその場に背を向けた。
彼は人気の無くなった廊下をゆっくりと進む。そして薔薇の模様が縁取りされた一際上等の扉の前で立ち止まった。ノックはしたが、許可も求めず中に入る。
暗い部屋には月の光が差し込み、先に部屋にいた人物を淡く照らし出している。
暗闇でも分かる深紅のドレス。
他の何色にも染まりはしない濃い色は、一国の主の気高さと、本人の意思の強さの象徴だった。
最も赤い、咲き誇った薔薇の様な貴婦人が、口元を隠した扇をユラリと煽ぐ。
「呼び出しておきながら後から悠々とやってきおって、随分な態度じゃのう、帽子屋。」
「これはこれは、女王陛下におかれましては、御機嫌が・・・麗しくはなさそうですね。どうやらうちの奴隷が大変世話になったようで。」
ビバルディがフンと鼻を鳴らす。明かりも付けずに会話をし出す二人は、お互いが相反する領土の頂点に位置する人物だ。




華やかな表は、配下の者達や他領土の重役すべてが出揃った豪華絢爛な舞踏会。
その裏では対立し合う組織のトップが、闇に隠れて誰にも言えない秘密の会合。


あってはならない裏切り行為だ。









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bkm


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