17
エリオットが部屋から出て行った後、囚人改め奴隷に昇格したパロマがこの屋敷で初めて遭遇した出来事、


それは『大量の家事洗濯』ではなく、『新人に対する完膚無きまでの洗礼』だった。


深く考えずにエリオットから言われた通り、同僚を探しに廊下に出たパロマだったが、そのすぐ後に同僚と思わしき、同じ制服を着込んだ男性達に囲まれた。
「お〜い、そこの新人。どうやってボスに取り入ったんだ〜。そのお綺麗な顔でか?」
「元は牢屋に入っていたらしいね。牢屋番が鍵を貰えなくて地団駄踏んでたって話。」
「―――え?!」
パロマは迫りくる男達から逃げようと後ずさりしたが、背中が廊下の壁にピッタリと付いてしまった。そこへつかさず回り込んだ彼らが、彼女の逃げ道を塞ぐ。
1人の若者が、パロマの長い髪をひと房ゆっくりとなぞった。
「こんないい女、目の前で鍵が掛かって手が出せないんじゃ、どっちが檻に入っているかわからないな。あっははは。」
「離して下さい!」
右にいる男がパロマの腕を掴んできたのを、彼女は力一杯振り払った。こういう輩に絡まれるのは、パロマにとっては頻繁に起こる厄介事だ。パロマの整った容姿のせいで、甘い蜜に吸い寄せられる蜂の様に、煩く群がってくる。
以前は貰われっ子という脅し要素を使って、オオカミ達が襲ってきたが、今回の様に銃をチラつかせながら迫られたのは初めてだ。
しかし逃げ道は塞がれても、自由までは奪われていない。
拳銃は怖いが、パロマは勝ち気に睨み返した。
「私は何もしていません。そうやって絡まれるのも心外です。どうか通して下さい。」
「おいおい、そんなに怖い顔するなよ。可愛過ぎて、もっと苛めたくなるだろ?」
「どうせボス達のお下がりだ。俺達とも遊んでくれよ〜。」
そう言って、パロマの肩を捕まえようとしてきた男の一瞬の隙を付いて、彼女は思いっきり彼の急所を蹴り上げた
「いっ!!」
彼が股を抑えてピョンと飛び上がったお陰で、パロマに脱出口が開けた。彼女は並はずれた瞬発力を生かして、一気に突っ走る。それはパロマのいつもお得意の逃げ方だ。
「なっ!おい、待て!!」
「逃げられると思うなよ!!」
内股で震える仲間の非常事態にあっけに取られていた男達は、パロマが逃げ出した所で我に帰り、かなり出遅れてパロマを追い駆けだした。


しかし、いくらパロマの足が速くても、ここは敵の陣地。
屋敷の構造を熟知している彼らに分かあるのは、火を見るより明らかだった。
さらに悪事の達人達は、パロマの体力が確実に無くなった所で、使われていない廊下まで彼女を追い詰める。
そこは、先が壁になった行き止まりだった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
パロマは焦って辺りを見渡すが、絵画が飾ってあるだけで、ドアどころか窓さえない。
「帽子屋敷の構成員を舐めてもらっちゃ困るな〜。」


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bkm


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