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パロマは、前を行くエリオットの早い歩調に小走り気味で追いかけていると、突然エリオットが振り返り彼女に向かって憎々しげに脅してきた。
「ブラッドはああ言っていたが、俺は端からお前の事なんか信用しちゃいねぇ。少しでもおかしな行動しやがったら、黙ってねぇから用心しな。」
エリオットは眼光鋭く、パロマを威圧する。なまじ顔が整っている分、怖さも絶大だ。パロマはゴクッと唾を飲み込んだ。


すたすたと歩きながら、エリオットは屋敷の内部の説明をし始めた。
「ここが武器庫だ。トラップが仕掛けてあるから、お前は一切立ち入るな。隣が宝物庫。中には銃を構えた顔なし共が常に見張てっから、安易に入ると即蜂の巣だぜ。その奥にあるのが俺の部屋だ。一歩でも足を踏み入れやがったら、一瞬で頭ぶち抜いてやるからな。」


「・・・・・。」


どこもかしこも命が無くなる。
しかし、エリオットは冗談を言っている風ではなかった。彼のあんまりな言い草に、パロマは閉口する。すると、エリオットがギンッと睨んできた。
「返事は!」
「はっはい!分かりました!!・・・・ところで、私は廊下以外で安心できる場所は、あるのでしょうか。」
エリオットがパロマを睨み付けながら、チッと舌打ちをした。
パロマの肩がビクッと上がる。どうやらちょっとした冗談も通じない人らしい。
「お前の仕事場はここだ。」
彼女の問いには一切答えず、エリオットは両開きの扉を一気に開けた。
パロマの髪が、向かい風でフワッと揺れる。優しい石鹸の香りと、ポプリの芳香が辺りに優しく漂う。
外に出られる大きな窓が付いた、窮屈な小部屋だった。大きな桶が数個置いてあり、そこにシーツやカバー等が山の様に乗っている。壁には括り棚が設置してあり、いろんな色や形をした石鹸や乾燥したポプリが、所狭しと置いてある。部屋の奥にはアイロン台が見えた。
パロマはさらに、驚いた顔で窓の外を見呆けた。
窓から望む景色は屋敷の壮大な裏庭で、沢山のポールが立ち、そして干された白いシーツが風にパタパタとなびいていた。
芝生が奇麗に切りそろえられていて、小道の両端には可愛い小花が行儀よく並んでいる。
良く管理されている庭だ。
奥には緑樹がサワサワと唸り、小鳥達が舞い上がった。
パロマはその長閑な風景に、今の自分とのギャップを感じずにはいられなかった。
「お前は主にここで洗濯係だ。後は床拭き窓ふき風呂掃除、とにかく雑用全版をやってもらう。何人か同じ仕事をしている奴がいるから、一度聞いてすぐ取りかかれ。―――サボるなよ。」
そう言い放って、エリオットは来た道を早々戻っていった。
パロマはエリオットが出て行ったドアを見つめながら、自分の降りかかった出来事に暫し茫然とした。



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